ドライブデート
服をいつもより念入りに選んだ。
nano・universeで、仲良くなった店員からアドバイスを受け、購入したシャツとパンツ、クラークスの靴との組み合わせを選んだ。
さらにポールスミスの5万円の腕時計をした。
総額10万円の服と時計を身にまとう。
その分、清潔感があり、シュッと見せられるコーディネートに仕上がった。
身だしなみや清潔感は、女性と会う上で大事な事だと、年齢を重ねる毎に実感する。
さらに鏡を見ながら、念入りにワックスで、スタイリングをしてバッチリ決めた。
今より15キロ太っていた1年半前までは、美女が横に並ぶと、気後れする自分がいた。
しかし、陸上選手時代と同等の肉体を取り戻した今の自分は(胸筋の発達により)物理的にも、心理的にも胸を張り、自信をもって対面することができる!
今の自分なら、どんな美女が来ても大丈夫!そんな無敵感を漂わせていた。
そして女の子とドライブをした。
女の子は、僕のドライブテクニックに、はしゃいだ。
車を走らせると、キャッキャッと喜ぶのでとても嬉しかった。
僕がカーブで曲がると、女の子もまるで自分が、ハンドルを切っているかのような仕草をするので微笑ましかった。
この瞬間、アンパンマンのショッピングカートが、まるでスポーツカーのように輝いていた。
デートの相手は、3歳になった姪っ子である。
この日は、県外にいる妹と姪が、1年ぶりに帰省してきていた。それなので久しぶりにイオンモールで食事をした。
今まで、なかなか姪に懐かれず、何度も苦い思いを味わってきた僕にとって、もはや手段を選んでいる場合ではない。
姪が嫌がる相手を妹から聞いていた際に、僕はある特徴に気が付いた。
全員太っていて、清潔感がない!
最後に会った時の僕は、まだポッチャリだった。
ここに姪っ子に懐かれるヒントがあるとひらめき、冒頭の全身キメキメの10万円コーデに、たどり着いたのだ。
姪に、気に入られるために、まるで美女とデートをするぐらい、僕は全力を出してみた。
女性はどの年齢であろうが、女性である。男の清潔感は、女性にとって全世代共通なんじゃないかという仮説に基づき、行動にうつしてみたのだ。
その効果は凄まじかった。
再会した瞬間に、今まで逃げていた姪がすり寄ってきた。
まるで恋人に見せるようなデレデレ具合だった(まだ3才)。
フードコートで一緒に食事をした後、妹からミッションをさずかった。
「お店で服をゆっくり選びたいけど、娘(僕にとって姪)がいつも邪魔をするので、服を選ぶ時間が欲しい。その間、娘を相手していて欲しい。」
そして、姪を退屈させない為に、ミッションを受けた僕はイオンモール内で、アンパンマンのショッピングカートによるドライブデートにたどり着いたのだ。
走るのは車ではなく、僕。
10万円のコーデをした男が、子供を乗せて、全力でアンパンマンのショッピングカートを押しながら、イオンモール内を端から端まで何周も爆走しているのである。
頭おかしく、目立つ事この上ない。
しかし、周囲の視線よりも、姪の満足度を優先した。
いつもは妹による、服選びで退屈していた姪が、とても楽しんでる姿を見られて大変満足だった。
妹が服を選び、買い終えて合流すると「ママ、まだ買い物してていいよ」と言い放つほど姪は楽しかったようだ。
この一連の過程で、姪の心を掴んだので、姪が僕にベタ惚れ状態になった。
「また遊んであげる」と言われ(まだ3才)、気に入られたようだが、まんざらでもなく喜ぶ自分がいる。
別れ際には、なかなか姪が帰らずグズついていた。僕に会えなくなるのが、寂しいようだ。
姪とお別れした後、僕は寂しさと、でも成果を出せた自分への自信に満ち溢れていた。
今の僕には、この台詞がよく似合う。
モテる男はつらいぜ!