田舎の社会のヒェラルキー(階層、階級)
今年ももう6月、そろそろ年の半分を過ぎようとしています。
今回は田舎社会について書いてみようかと思います
わたくし、ワニは地方のIT企業を退職してフリーランスとしてIT界隈で仕事をしています。
今も地方なんですが、子供、幼少期はもっとド田舎で育ちした。
商店が数件、映画館や本屋、ゲーセンなんてない、食堂なんてない。なので子供の頃外食した記憶なんて殆どない。小学校の児童数は2桁人、当然1学年で40人以下。複数クラスはないのでクラス替えというものが存在しません。
そんな中、子供達は保育園、小学校、中学校と転校を除けば、ほぼ平行移動でみんな顔見知り、幼馴染でした。
さぞかし、牧童的で開放的な幼少時代なのかと思われますが、実際はそうではありません。
こんな田舎社会でもヒェラルキー(階層、階級)は存在します。
いや、むしろ田舎だから存在すると言ってもいいのかもしれません。
田舎なので大した産業もなく、殆どが農家、近隣の中小企業で歩合制で働く人、あとは若干の商店、公務員です。
その中でもやはり学校の先生、郵便局員等の公務員は階級の中でも最上位に位置します。その次が商店等の家業の経営、あとはその他になります。わたくしワニの両親はその「その他」でした。
なにしろ公務員は月給制で必ず決まった給与が毎月貰え、厚生年金、退職金もあるるホワイトカラーですから(古)。わたくしワニの両親は近隣の木材伐採会社で働いていましたが、歩合制です。その年の天候、景気に左右されます。退職金も大してありません。
子どもたちも親の職業によってヒラルキー(階層、階級)が存在します。当然、親がヒラルキーの上位に位置する子供も上位に位置し、生意気で子供同士の中でも幅を効かせます。
そんな中、近所に1歳上級生の男の子がいました。彼の家は田舎のヒェラルキーの中では上位、いや特級と言ってもいいかもしれません。父親は郵便局員で、その他、新聞配達、自転車屋等の家業も営んでいました。その父親は長いこと小学校のPTA会長でもありました。彼には上に年の離れた姉が2人(くらいだったかな・・・)いたと思います。
彼の両親、祖父母にしてみれば女の子が続いて生まれ、やっと年は離れたけど後継者の男の子が生まれ、可愛くてしょうがありません。家も郵便局員と家業を営んでいるので裕福です。
それこそ、何でもやりたい放題。言えば何でも買ってくれる。この世は自分の天下。彼はそんな幼少自体を過ごしていました。
当時、子供の男の子の間で流行っていたのはテレビのアニメ番組で出てくる合体ロボット。その番組放映とほぼ同期して合体ロボットのおもちゃが売り出されます。これがシリーズで、どんどん次々と増えていくんですなー。そして、全種類集めると(コンプ)ひとつの大きなロボットとなると言う。なかなかの男の子心をくすぐる商法でした。当時としてはかなり高級なおもちゃで誰でも彼でも買えるというものではありません。こんなのみんな欲しくてたまりません。
それが彼の場合は自由に手に入る。毎月のようにアニメ番組で新シリーズや新しい武器が登場するとそれに追従しておもちゃのロボットも発売される。ほぼ、それに追従して手に入れていたと思います。
わたくしワニの家庭ではそんな高級なおもちゃは買ってもらえません。羨ましくて、いいなーと眺めるだけした。
そんな中、わたくしワニは毎日小学校に登校する時は彼の家の前を通るのですが、ある日、ふと彼の家の前を通ると窓から彼が新シリーズのおもちゃを自分に向かって見せ、「買ったゾ」と見せびらかすのです。
子供心にそれが悔しかった。自分には買って貰えない、到底無理なおもちゃが彼は簡単に当たり前の様に手にできる。「買ったゾ」の裏には「お前には到底無理だろうけどな・・・」の意味が込められています。
田舎社会のヒェラルキー(階層、階級)をモロに子供に突き付けられる。これほど残酷なものはないです。
そんなことがしょっちゅうで、わたくしワニは彼と彼とつるんでいる友人達(ジャイアンとスネオみないなもんか?)にしょっちゅういじめられていたり、家が貧乏だからと馬鹿にされていました。
そんな田舎社会でわがまま、やり放題で育った彼は中学、高校へと進学するにつれワルぽく、不良ぽくなっていきました。
彼が高校生3年の頃、ある日事件がおきました。
近所の養鶏所でどうも車からガソリンが抜き取られたらしい。現場にはバイクのタイヤ痕が残っていました。たかがガソリンが抜き取りと言えども立派な窃盗事件。警察と当時、地域の交通指導員であった彼の父親が犯人捜索をしました。なんと、残ったタイヤ痕と彼が乗り回していたバイクのタイヤ痕が一致しました。どうやら夜中バイクを乗り回していてガソリンが無くなりガソリンスタンドが開いていないので、てっとり早く養鶏所の車のガソリンを抜き取ったようです。
これは彼の父親もショックでした。彼の父親は田舎とは言え地域の名士です。郵便局員、PTA会長も努め、交通指導員、他、様々な地域の活動に関わっていました。まさか・・・自分で捜査した事件の犯人が自分の息子とは・・・
当然、窃盗は彼の高校にも報告され、彼は高校3年で卒業目前というところで退学になりました。
それきり、彼とは音信不通でその後、どこでどうなったのか・・・?
そんな中、今から10以上前だと思いますが姉から、その彼がバイクの事故で亡くなった、ニュースでも出てたという話を聞きました自分も大型バイクに乗るので気をつけろと姉に言われて・・・ま、幼少期のそんな経緯もあり、どんな事故なのかネットで検索してみました。
彼のバイクが直進で、右折してきた車の右後ろに追突し彼が投げ出され全身打撲で即死だったようです
ん?バイクが直進で、右折してきた車の★右後★ろに追突・・・?
んんん・・・車の右後ろって?どんな状況なんだ?普通の右折事故じゃないな。と色々ニュースを調べてみると、どうやらこういうことらしい・・・
彼のバイクはスズキのハヤブサ1300。自分も大型バイクに乗るからわかるけど、このバイクは最高速で300km/hを超えるモンスターバイクです。彼の名前で検索すると彼はこのバイクでレースにも出場していたようです。状況から察するにこの右折してきた車は悪くない。普通に右折したところが、後ろから猛烈なスピードでバイクが迫り追突。ニュース映像を見るとバイクは粉々で原型をとどめません。車とバイクの速度差はかなりの速度差だったと、つまり彼はかなり違法な速度を出していた、100km/hやそこらではない可能性が高いです。(なにしろ、最高速が300km/h超えるバイクだから)
田舎の幹線道路で仲間とツーリング中の事故のようで、ニュースには同行した仲間たちが呆然と立ち尽くす姿も映し出されていました。
当時(今はどうなのか?)田舎でも地元の名士であった彼の父親は自分の息子の死、自分より早く逝ってしまったことをどう受け止めたであろうか・・・
ニュースを見ると彼は自営業とあり、年齢もそれなりの年齢だったので結婚して家族もいたかもしれない。知らなかったけど意外と今の自分と近くに住んでいたらしい。
幼少の頃いじめられ、貧乏だと彼に馬鹿にされてはいたが、その後の彼の人生、そしてその最期を見ると、なんとも言えない複雑な心境。