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【ショート・ショート】アップデートのお知らせ
お題
「普通じゃない常識がある世界を考えてみよう」
本文
ある日、お金に困っていたAくんは1つのアプリを見つけた。
紹介画面を見ると、レシートを読み取り、自動的に家計簿に記録してくれるものだった。Aくんは喜んだ。コレでどんぶり勘定とはおさらばだ。結果は3日坊主だった。
諦めかけていたその時、アプリが自動でバージョンアップされた。
知らせ画面を見ると、支払いしているときの会話内容や動画を解析して、支払った金額を自動で家計簿に記録してくれるらしい。Aくんは喜んだ。コレで三日坊主からはおさらばだ。しかし、月末に収支がマイナスになることは変わらなかった。
諦めかけていたその時、アプリが自動でバージョンアップされた。
知らせ画面を見ると、銀行口座の預金残高やコレまでの支払い傾向から無駄遣いを予防するアラートを上げてくれるらしい。Aくんは喜んだ。コレで使いすぎとはおさらばだ。しかし、お金を使わないでどのように生活を楽しんだらよいかわからなかった。
諦めかけていたその時、アプリが自動でバージョンアップされた。
知らせ画面を見ると、コレまでの娯楽の傾向や生活習慣病リスク等すべてを加味して計算された年間経費の予想額と、現在の収入が釣り合っているか自動で計算してくれるらしい。Aくんは真顔だった。現状、アプリのお陰でかろうじて年間収支はプラスではあるが、もっとプラスのほうが良いんだろう。でも、何をすればよいのかは全然わからなかった。
諦めかけていたその時、アプリが自動でバージョンアップされた。
知らせ画面を見ると、現在無駄に使ってしまっている可能性がある時間と、その時間でできる近所のアルバイト情報を教えてくれるらしい。Aくんは苦い表情だった。そうだ、自分がグダグダとスマホを触っている時間はたしかに無駄なことも多い。でも、その時間でバイトをしようとも思えない。
諦めかけていたその時、アプリが自動でバージョンアップされた。
知らせ画面を見ると、Aくんの悩みを解決してくれる新しい法律が制定されたので、その申請を手伝ってくれる機能らしい。Aくんは戸惑った。本当にいいんだろうか?いや、詰んでるからコレしか手はないよな。
Aくんは申請ボタンを押した。希望日と1つのチェックボックスを埋めたらそれで終わりだった。あとはその日が来るのを待っていればいいらしい。
助かった。
アプリは、今後も困った人を助けるためにバージョンアップを予定しているという。
あとがき
このショートショートは「普通じゃない常識がある世界を考えてみよう」というチャレンジ企画の中で創作したものです。どんな常識をベースにこの物語を書いたのかを話しておりますので気になる方は覗いてみてください。