うつわのおはなし 〜有田焼・李荘窯のステキなうつわ〜
タイトル写真は、有田焼・李荘窯さんの一輪挿しです。
私は今、手元にこれらを迎えて、とてもテンションが上がっています。
今日は、有田焼のウンチクを語りながら、この一輪挿しについて、そして私にとっての李荘窯さんの魅力について、綴ってみたいと思います。
はじめに
うつわ好き素人の、気ままなエッセイのようなつもりで綴っています。
内容は、もちろん学問的なことには及びませんし、私の個人的な感想も含みます。
加えて以前に綴ったことと一部 重なってもいるのですが…
本人は、(無謀にも)楽しく綴っています。
お時間とご興味がございましたら、どうぞお付き合いください。3,900字くらいです。。
私がこれらの一輪挿しを初めて目にしたのは、昨年の11月頃。
あるサイトで目にして、「ふわ~」っと心が動きました。
ふわ~っとしたまま、とくに何も行動することなく時が流れていましたが、約10ヶ月の月日が経過した先日、再び出会いがありました。
今度は「グラグラッ」と心が揺れ動いた私は、今こそ!と即断して手元にお迎えすることにしたのです。
これが ”ご縁” というものなのでしょう。
これらの一輪挿は、李荘窯 四代目ご当主・寺内信二さまの作品です。
この写真ではサイズ感がわかりづらいですが、右側の花柄は 高さ約10㎝、左側のコマ型は 約6cmという、かわいらしいサイズです。
では。つらつらと、ゆらゆらと、語ってみます。
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李荘窯さんのご活躍 ~伝統と革新~
以前にも触れたことがあるのですけれど、李荘窯 四代目・寺内さまは、伝統と革新の両輪で有田焼をけん引されており、その多岐にわたるご活躍は、枚挙にいとまがありません。
寺内さまの うつわは、その美しさゆえ、国内外のトップシェフから愛され、わかりやすいところでは、一昨年11月の天皇即位の礼 晩餐会でも、寺内様のうつわが使われました。
またご活躍は飲食の場に留まらず、有田焼の新たな世界を創造されています。それは後ほど。
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革新
まず伝統と革新の、「革新」の方から。
こちらの記事は、昨年訪れた 嬉野のレストラン「李荘庵(RISOAN)」さんの食レポに挑戦した時のものです。
李荘庵さんで使われているうつわは全て、李荘窯さんのもの。
記事は 拙文かつ長文ですが、もしも写真だけでも覗いていただけましたら、李荘窯の「革新」の、ごく一部をご覧いただけるかと思います。たぶん。
革新という点では、「珠型重」はその象徴と言えるのかもしれません。
まん丸い 球体のお重です。三段重、五段重があります。
(↑ 写真は李荘窯HPよりお借りしました。)
私がとくに李荘窯さんに惹かれるようになったのは、寺内さまがテレビでこの 珠型重の取材を受けられているのを見たことがきっかけでした。
何年前でしょう。NHKだったと思います。
当時この お重は、私が大好きな伊勢丹の、おせちカタログの表紙を何年か飾っていました。
ですから、テレビを見る前から その存在は知っていましたし、「なんて斬新でオシャレなうつわなのでしょう」ということは、ぽわん と思っていました。ぽわんと。
たまたま見たその番組で、まん丸のうつわをピタっと重ねるためには 高い技術が必要であり、試行錯誤を繰り返されて美しい球体の完成に至ったのだということなどを知り、そこから強い興味を持ち始めたのでした。
以来、その珠型重には何度か出会っています。
ある時は、有田で。
ある時は都内で。
昨年は、有田でこのお重を使ったお食事も頂きました。
なんともワクワクするランチでした。
珠型重。いつか我が家にもお迎えしましょう。(手の届く範囲のものを…。)
もう少し、「革新」と思われる作品の写真を添えてみます。
こちらは「カカオ」をモチーフにされています。
念のため。手前が本物、奥が作品です。
ある人気のパティシエの方との コラボでつくられたと伺っています。
こちらはライト。オシャレですね。
磁器を通して柔らかく灯る光が、またステキ。
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伝統
一方、私が今回お迎えした一輪挿しは、「伝統」にあたるのだと思います。
何が「伝統」なのかということを、私なりに少しお話ししてみたいと思います。
■まずは、有田焼の始まりについて。
(優秀な陶工と、陶石の発見から 始まる有田焼 )
日本で最初の磁器である有田焼は、1616年に誕生しました。
大雑把にいうと、陶器は土、磁器は石でてきています。
やきものは、土器⇒陶器⇒磁器の順で生まれました。
豊臣秀吉の朝鮮出兵の際に、全国の多くの大名が朝鮮半島から日本に陶工を連れ帰りました。ここで朝鮮半島の作陶技術が日本に伝播するわけですが、有田も例外ではありませんでした。
佐賀藩の鍋島氏が招いた 「李 参平 」という優秀な陶工は、有田の地に技術を伝え、加えて磁器の生産に適した陶石(泉山磁石場)を発見して、日本で初めて磁器を焼くことに成功したのです。
その陶石は当時、金にも匹敵する貴重なものとして、佐賀藩が厳重に管理していたそうです。
なお、誕生を導いた李 参平は、有田焼の「陶祖」と呼ばれています。
今日おはなししている「李荘窯」の名は、陶祖・李参平の住居跡に開業していることに由来するそうです。
陶業界に知れ渡る 美術の教育者だった初代が、出身地の山口から有田へ招聘された際に、李参平の住居跡が用意されたそうです。
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■ 原料となる陶石
当初 有田焼は全て、李参平が発見した「泉山磁石場」の陶石でつくられていました。有田の陶石です。
今なお人々を魅了する17世紀の「初期伊万里」などは、泉山陶石でつくられているものです。
初期伊万里≒最初の有田焼。有田の地で焼かれた磁器は、積出港の名をとって伊万里焼と呼ばれていました。
一方、現在の有田焼のほとんどは、熊本県の天草陶石でつくられています。
今から100年ほど前に、より白い肌を目指して泉山磁石から天草磁石へ移行していったようです。
泉山はすでに山ひとつが削られているような状態ですし、扱いやすさの面からも 天草の方が有利だそうで、今では有田焼の99%が天草陶石を原料としているのだとか。
美を追求して変えていったわけですから、もちろん、天草陶石で焼かれるうつわは「有田」の美しいうつわに違いありません。
ただ、泉山陶石でつくられた初期伊万里の伝統美は、現在の有田焼の礎になっていることは間違いないでしょう。
どこかやわらかく青みがかり、現在の透き通るような “白” とは少し趣が異なります。
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■指の跡
また初期伊万里の特徴として、多くのうつわに、陶工の「指跡」がついていることが挙げられます。
現在は素焼きをしてから釉薬をかけますが、当時は「生掛け」といって、生土に直接 釉薬をかけました。
生の土はとても儚く、土が崩れないよう大切に扱った結果、たっぷりとかけられた釉薬の上に指の跡がついたそうです。
指の跡には人肌感があり、これが、「初期伊万里は指跡の温もり」などとも言われる所以です。
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■染付(そめつけ)
有田焼と言えば、柿右衛門様式の赤絵・色絵をイメージされる方が多いかもしれません。
でも有田のスタートは、白地に藍色の染付でした。
呉須(ごす)という絵具で描かれています。
有田焼の原点である初期伊万里は、総じて どこか ぽってり としてあたたかみがあって。染付が醸しだす やさしい風合いは、私たちのDNAにすうっと染み入るように感じます。
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さて、おはなしを一輪挿しに戻します。
この一輪挿しは、寺内さまが、有田焼の美の原点を追求し、表現されたものです。
轆轤(ろくろ)、絵付け、釉かけと、全ての工程を寺内さま お一人でされたとのこと。
■ 原料は有田焼の誕生当時と同じ、貴重な泉山陶石でつくられています。
■ 指の跡がついています。
■「伊万里ブルー」の染付です。
凛とした中にも、やさしさや ぬくもりを感じるのは、この伝統技法から生み出されたものなのだと感じています。
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ところで冒頭部分で少しおはなししました通り、李荘窯さんのご活躍の場は飲食の世界にとどまりません。
最近、李荘窯さんは建築の分野に有田焼を広げられていることを、今年の春のNHKの番組で知りました。寺内さまがたっぷりと密着取材を受けられていた番組です。
例えば、リニューアルされた佐賀大学の校舎エントランスの壁面には、李荘窯さんが製作された800枚もの美しい瑠璃色の陶板が施されているそうです。
瑠璃の濃淡で表現されたその壁画は、圧巻でしょう。観たい!
都内のビルでも、1Fから10Fまで、李荘窯さんの陶板が施されているビルがあるそうです。
階を上がるごとに瑠璃の色が淡くなっていき、10Fまで行くと真っ白になっているというファンタジー。
深海から海面へ向かうような、あるいは移り変わる空を泳ぐような、そんな建物なのかしらと想像しています。
そういえば、地元の「有田小学校」では、手洗い鉢が有田焼でできているとのこと。こちらもある箇所については李荘窯さんの染付が使われているそうです。
なんて幸せな小学生なのでしょう。(こういうことは、もしかしたらオトナになってから有難みがわかるのかな。)
まだまだ綴りたいことが、頭の中をくるくると回っています。
でもだいぶ長くなりましたので… 最後に写真を数枚 添えて、今日は おしまいにしたいと思います。
私の手元にやってきた一輪挿しは、きっと大活躍してくれることと思います。
今後、私のnoteでも頻出する予感がしています。どうぞお見知り置きを...。
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*伝統の うつわたち *
大好きな「花唐草」の文様。
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染付いろいろ。
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かわいい豆皿。
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素敵な そばちょこ。
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サボテンだって似合っちゃう植木鉢。
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長くなりました。
最後までご覧くださいまして、ありがとうございました。
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