写真日記 ~小春日和の青山さんぽ~
■ 2024.11.17 にちようび
こよみの上ではすでに冬。
七十二候では、『地始凍(ち はじめてこおる)』も過ぎ、『金盞香(きんせんか さく)』に入りました。
金盞とは、水仙のことだそう。水仙といえば、冬の花の代表選手のように思いますけれど、もうその花が「香」という候になったのですね。(香ると書いて“咲く”!)
今日はそんなイメージとは程遠く、ぽかぽかすぎる小春日和でした。
そのような陽気の中、私は午前中に用事を済ませると、今日、どうしても行きたかった場所へと向かいました。
以下、スマホで撮った写真とともに、日記を残したいと思います。
目指すは青山一丁目。心がはやります。
駅に到着すると、まずは絵画館前の『神宮外苑いちょう並木』へ。
全体が黄金色に輝く景色には、まだ少し早かったようです。けれど、陽当たりにより所々の木々は美しく色づいていました。
私は、もろもろの都合で、今日を逃すとしばらくの間は来れそうにありません。今日来なければ、見頃を逃してしまっていたことでしょう。
今の時点で、じゅうぶん、じゅうぶん。
* * *
そして次に向かったのは、『今右衛門東京店』です。
私の前回のnoteを読んでくださった方には、え?また⁈と思われてしまうかもしれません。ええそうです。また行きました。
なぜって、それは、年に一度の『お酒をたのしむうつわ展』が開催されているからです。
会期は11月16日〜24日。
先ほどのとおり都合があって、私にとって会期中に行けるのは、今日が唯一のチャンスでした。
いちょう並木からは目と鼻の先の東京店。
お店の前で深呼吸をしてから、ドアの取っ手をギュッとにぎりしめます。先代(十三代)今右衛門の作品です。
訪ねるたびに、十三代の、この心意気を尊敬せずにはいられません。訪れる人 誰もが、人間国宝による「色鍋島」に手をふれることができるようにしてくださいました。
そして店内。
もう、どれもこれも美しく、うっとりと魅了されます。
一部、写真を撮らせて頂きました。
以下3枚目までが十四代(個人)の作品、4枚目は「今右衛門窯」の作品です。
写真はありませんけれど、こちらの箸置きも、とっても素敵でした。「色絵墨色墨はじき草花文箸置」。十四代の作品です。
奥ゆかしさと華やかさ、そして品格を備えた美しさに心奪われました。
でも今日は、私の今右衛門愛については控えまして、次にまいります...。
* * *
夢見心地で今右衛門東京店をあとしにて向かったのは、『とらや赤坂店』です。
青山通りをてくてく歩いて、15分くらい。ジャケットなんかを着てきたら、汗ばむようなあたたかさでした。
こちらでも、今日来なければという資料展が開催されていました。
『包む・彩る・伝える 虎屋のパッケージ展』です。
会期は11月24日まで。
10月1日から始まっていましたが、これまで機を逃していました。私にとっては やはり、今日がラストチャンスです。
展示はどれも、とても興味深かったです。中でもひとつ、ほんとうに観ることができて良かったと感動したものがありました。
江戸時代の『百味箱』です。
百味箱とは、百味菓子を入れるための、五段重ねの重箱のこと。私は以前、こちらの中で少し綴っています。
江戸時代に、有卦(うけ)という幸運な年回りに入った際などのお祝いの行事に、宮中から虎屋さんに100種類の和菓子の注文があったそうです。それが百味菓子です。
現在の約3倍の大きさの和菓子が100種類、 漆の重箱に納められたというのですから、それは壮観です。
今回は、当時のその和菓子を再現したものまで展示されていて、江戸時代のその感性と技術の高さにため息がもれるようでした。
『百味箱』・『百味菓子』は、これまで複数の和菓子関係の本で目にしていました。これがよくとりあげられるのは、長い長い和菓子の歴史の中で、江戸時代(1690年代)に完成されたという上菓子の シンボル的存在だからでしょう。
本の中では、写真が掲載されているものもありましたので、どういうものなのかということはイメージがつかめていました。でもやっぱり、実物をみると、ああ、これが!と、胸が高鳴ります。
スクリーンの中で観ていたスターに、実際に会えたような感覚でしょうか。
「私、いつも観ています!お会いできてうれしいです!」みたいな感じです。(すこしマニアックですか…?)
それにしても、「パッケージ展」とはいえ、パッケージ以前の時代の、漆塗りの重箱、木箱などもこのように展示されるとは。さすが御所や公家、武家などの御用をつとめた上菓子屋・とらやさんの展示です。中には螺鈿を施した重箱などもありました。
展示物の写真は撮れませんので、しっかりと目に焼き付けた私です。
こうして地下で展覧会をたのしんだ後は、お二階のショップへ。
私は、毎年使用している卓上(壁掛けにもなる)カレンダーと、季節の生菓子を二つ購入しました。
ほんとうは、三階の茶寮でお茶とともに生菓子を頂きたかったのですけれど、一時間待ちとのことでしたのでアッサリあきらめました。それでお持ち帰りの生菓子を。
こうして自分への、しあわせタイムをお土産にして、帰路につきました。
*
ところで私は、パッケージ(包み紙)というものに対して、郷愁の念をおぼえるのです。
幼い頃、お菓子の包み紙などは、たいせつな宝ものでした。押し入れに色とりどりの包み紙を丁寧に畳んでしまいこんでいた祖母の影響もあるのかもしれません。
大きな包み紙だけではなく、ちいさな飴の包みも私にとっては宝もの。
サクマの「いちごみるく」なんて、飴を口にほおばっては、包み紙のシワをのばして缶の中にしまうのがたのしみで。いちごの柄がかわいかったのですね。
それで今回の「パッケージ展」は興味津々だったのです。
実際に訪ねてみて、包み紙はもちろんのこと、江戸時代の漆のお重に さらに心惹かれたのは、それだけ年月を経て 歳を重ねたということでしょう…。
色づく いちょうを愛でて、
大スキな うつわを堪能して、
和菓子の世界をたのしんで。
たった半日で、和の世界を存分にあじわった日曜日でした。