全ての始まりは四国一周:第三章・阿波国、雨のちはれ
逃げる雨男、追いかける雨雲
早朝5時。ネカフェのナイトパックプランで入っていた我々はナイトパックが適用される時間内に出発する必要があった。まさに貧乏大学生の旅である。まだ薄暗い中高松を出発した。
天気予報通り、今にも雨が降り出しそうな天気である。薄暗いのは早朝のせいというより雨雲のせいのようだ。
雨が降るまでになるべく距離を稼ぎたいということでノンストップで徳島へ向けて国道11号線を走り続ける。
ものすごい湿気が身体にまとわりついてくる。走り始めからものの30分ほどで無情にも雨が降り始めた。
エスケープ君がぼやきだす。
「おい雨男、もう少し手加減しろや」
「すまん、こればっかりはどないしょうもない」
なぜ自分が謝っているのかもわからないが、明らかにこれまでの人生から自分が雨男である自覚があったので雨が降ることにいつも謎の負い目を感じていた。
そのまましばらく走ると道の駅が見えた。まだ営業はしていないようだが雨宿りはできそうである。しばし龍神様の気が静まるまで建物の軒下を貸していただくことにした。
「初日からこれかよ〜、頼むでほんまぁ」
ルイガノ君もぼやいている。
この時彼らが私の持つ雨雲を呼び寄せる力を知ったらきっと旅の仲間から外していただろう。
徳島に入る
しばらく待っていると雨足が弱くなった。天気予報をみるにしばらく雨は降らず、むしろ晴れてくるという。
「ぼちぼち走り始めますかぁ」とエスケープ君がスタートの号令をかける。
雨との戦いであまり気にかけれていなかったのだが改めて海岸線の景色を落ち着いて眺めることができた。旅をしているんだという感覚が気持ちを高揚させてくれた。
いくつかの山を越え、開けた地域に出てきた。市街地をしばらく走ると大きな川が見えてきた。吉野川である。大きな橋を渡り繁華街に入る。太陽はもう傾き始めていた。
「徳島って何あんの」
「ラーメンと阿波踊り?」
「阿波踊りやってへんからラーメンしかないやんけ。晩飯はラーメンにしよ。」
正直なところ徳島についてあまり何も調べずに来た。鳴門などの海沿いや大歩危小歩危など、もっと山奥の方に行けば見所があるのは知っていたが中心街には何があるのだろうか。
眉山?登ってる時間がない。ということで徳島城跡をプラプラと散歩したあと、早めにお風呂に入ることにした。
「今日の感じやったら全然余裕やなぁ」
と風呂で粋がっていたルイガノ君も休憩スペースの椅子で口をあんぐり開けて気持ちよさそうに寝ている。
エスケープ君もいびきをかき始めた。私が寝ない理由がどこにあろうか。安眠の誘惑に身を委ねることにした。
出徳島
結局2時間ほど仮眠を取った我々はもうしわせていた通り徳島ラーメンに舌鼓を打ち、昨晩に続きネカフェに入った。
そしてまた早朝5時に出発する。
徳島大学のキャンパスを左手に眺めながらまた11号線を南に向かって走り始めた。今日の天気は晴れ。雨が降るという予報もない。
どこまで暑くなるのだろうかという不安もある一方で、いよいよ市街地のない大自然の中に飛び込んでいくんだというワクワク感が我々の背中を押してくれていた。
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