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ルート確認 or 遭難?オフロードを舐めてはいけない
常連のMさん、Cannondale Synapse neoをお買い上げ
去年の暮れ、木枯らしに乗った落ち葉が氷川参道で乾いた音を奏でる中、Mさんがお店に遊びに来た。Mさんは以前にうちでTarmacを買ってくれていたのだが、どうしても乗るのに気合がいるため、乗り心地が良くて気軽に乗れるようなバイクが欲しいとのことだった。色々話し合った結果、Cannondaleの電動バイク、Synapse Neoがいいのではないかという結論に落ち着いた。
「シナプスならタイヤ太いし、オフロードある程度走れるよ。ちょうど入荷したオフロード車2台あるし3人でどっかの山走りに行こう。」
そう言う店長の目は嬉々として輝いていた。
店にちょうど入ってきていたTrek Boone(タイヤ32c)に私が乗り、店長がDomane(タイヤ38c)に乗ることになった。久しぶりのオフロードということもあり、冒険の匂いに我々の心は高鳴っていた。
目指すは大福山
出発地点に選んだのは山の駅養老渓谷。この日はお祭りをやっているらしく、たくさんの人や楽器の演奏で賑やかな雰囲気になっていた。
目指すのは大福山展望台。といっても展望台は閉鎖されているらしく、眺望も大して望めなさそうではあった。しかし今回の目的は眺望ではなくオフロードを走ることである。眺めの良さなど二の次である。
しかしルートの下調べも二の次にしてしまっていた。
これがそもそもの間違いだったのだが、この時は「ノリで進めそうな方に進めばええんでしょう?」くらいに考えていた。
普通に登山するときは地図に穴が開くほど等高線と睨めっこするくせにこの時はなぜか完全に舐め腐っていた。
養老渓谷までは普通の舗装路で、観光客も多く、田舎の朝の心地よいライドという感じであった。いつもより太いタイヤが地面に食いつき、足元から心地よい走行音を奏でてくれていた。
早速、道を外れてオフロードっぽい道を走ろうということで、道があるのかないのかわからない方向へと突っ込んでいった。
結果、全く走れずバイクを押して歩くことになった。
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道は間違えていないのは確かだが、もはや道というより現地の人が踏み固めた跡のような、渓谷に細々と踏み固められた段差のようなところを歩くことになった。周囲からガサゴソと動物の動き回る音が聞こえる。藪をかき分けながらなんとか普通の道に出ることができた。
「ま、まぁ、こんな感じで走れないところは担いで歩きましょう」
冒険の甘美な誘惑に誘われて
大福山までは林道を走っていく予定だった。途中分岐に差し掛かり、地図を確認する。
「多分こっち(舗装路)行くとただの道なので、こっちの未舗装路行きましょう。」
紅葉した木々が立ち並ぶ赤い回廊をゆっくりと進んでいく。タイヤが小石を弾く音が渓谷の静寂の中で響き渡る。
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しかし徐々に道は荒くなっていき、ついには走ることができないほどになった。挙句の果てに目前には小川が出現した。
「こういう走れないところや、川は自転車担いでいくんですよね」
と、確証バイアスに満ちた行動を重ねていく。今から考えればどう考えてもおかしい。思考のクセとは恐ろしいものである。
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まるで愚かな人間を嘲笑うかのように自然が行く手を遮ってくる。結局、ほとんど走ることなくバイクを担いだり押したりして小川を3本越えたあたりで、流石におかしいと気づき始めた。
このまま進んでも何もないのではないか。しかしここまで苦労して来た。今更引き返すのか。。。
この時点ですでに人間の典型的な失敗する人間の思考パターンに陥っていることは薄々勘付いていた。
そんな愚者を救ってくれたのは、数人でハイキングを楽しむ好々爺の一行であった。
この道の先達に先がどうなっているかを尋ねたところ、やはり急峻な登山道でとても自転車で走れるような道ではないとのこと。
「我々は道を誤りましたね。引き返しましょう。」
ここまで来るのに苦労はしたが自分たちの失敗を認めるしかなかった。最初に道を間違えた分岐まで戻ることにした。
正しい道へ。それでも荒れているが。
当初予定していたルートに戻り、きっちりヒルクライムを楽しんだ。それでもロードで走るとちょっと不安だなと感じるような箇所が多々あった。
しかしそれ以上の荒れた道というか道ではないところを走ってきた我々からすれば余裕だった。
無事、大福山を登り切り、北側に下山してOIKAZE COFFEEへ駆け込んだ。
自転車乗り向けのカフェで手作り感満載の素敵なお店である。
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最後に店主に教えてもらった近くのグラベルコースを少し走ることにした。
日没の手前、夕日に照らされた斜面がとても美しく、舗装路だけ走っていたら絶対見れない景色に浸ることができた。
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結果としては良かったが、次に林道に入るときはちゃんと道を調べておこうと沈みゆく太陽に誓った。
お風呂ード
もちろん締めは温泉である。今回訪れたのは養老渓谷から南に車で15分ほど走ったところにある七里川温泉。
泉質は硫黄泉の源泉掛け流し。入り口入ってすぐに囲炉裏がある情緒溢れる温泉宿である。日帰り入浴も夜まで受け入れてくれるので、養老渓谷付近のライド後にはおすすめである。
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