子供の頃の遊び
今は、子供の遊びというと、コンピュータゲームか、カードゲームになるんだろうか。私は子供がいないので良く分からないが。そんな印象。
コンピュータゲームというと、私が中学生くらいに、ゲームウォッチというものがあった。業務用だとインベーダーゲームが有名か。
任天堂のファミリーコンピュータ、ファミコンが出たのが高校生の頃。小学生とか、幼少期には、私の周りにはコンピュータゲームなんて存在していなかった。
今だと、仕事先で課長とか部長だとかいうクラスの人でも、クリティカルヒットだとか、〇〇コンボだとか、ゲーム由来の言葉を普通に使う。二十代三十代となると、スキルがどうこうとか言っていたりすると、使っている言葉が本来の意味なのか、ゲームとかで使われている意味でなのか、私には判別がつかないことが多い。
こんなコンピュータゲームに馴染みがない年寄りが子供の頃にしていた遊びと言うのは、サザエさんでカツオ君がやっているように草野球か、三角ベース、ボールを転がして手で打つ、というゴロベースとかいうものだったり、陣取りや缶蹴りといった古典的な遊びだった。
他には、メンコやビー玉、独楽回しといったところだったか。ベーゴマは、親の世代はやっていたようだが、私の頃には廃れていたのかやっていなかった。
私は手先は器用な方だったので、メンコやビー玉とか、独楽回しは得意だった。独楽回しは、今でも綱渡りくらいはできる。
以前田舎に帰省したとき、甥っ子が独楽回しをしていて、地面で回っている独楽を手に載せて、叔父さんできる? とか自慢げだったので、直接手に載せてから綱渡りをしてみせたら、目を丸くしていた。ちょと大人げないことをしてしまったが、私が子供の頃はこれで自慢にはならなかった。
独楽を手に載せて、独楽が回っている間だけ移動できるという鬼ごっことかもあった。独楽を手に載せられない子は参加すらできない。
メンコやビー玉といったものは、相手と勝負して勝つと相手の物をもらう、というルールだったので、ギャンブル性があって教育的には宜しくない、とよく言われていた。学校には持ち込み禁止だった。
学校に持ち込んで、教師に怒られる者も時折いた。新しいメンコだとか手に入れて、学校で交換しようとかそういう目的で持ってくる者がいたのだが、よせばいいのに教室でメンコとか始める奴がでてくる。そうすると教師に没収されたりする。大抵は女子が先生に報告して発覚していた。
あるとき、そうして発覚してメンコを没収されたクラスメートが数人いた。
「メンコが上手いことを自慢したいのは分かるけど、学校ではやらないように。で、誰が一番上手いってことで始めたの?」
先生がそう言ってその子らに尋ねていた。
「この中には一番上手いのはいません」
その中の一人が言った。
「誰が一番上手いの?」
「あいつです」
そういって指を指されたのは私だった。とんだとばっちりだ。
「〇〇君は、とてもメンコとか出来そうも無いけど。ほんと?」
ちょっと先生の言い方も失礼な気はしたが、
「僕は学校でメンコとかやりません」
なぜか私まで弁明する羽目になった。
私が一番上手い、と言うのは、まあ、ある意味間違ってはいなかった。
メンコの勝負にはいろいろとあったが、相手のものを遠くに飛ばす、というものが一番単純な勝負だった。私はこれで殆ど負けたことが無かった。メンコの勝負で、殆どのクラスメートから巻き上げたものが、お歳暮のお茶の缶が入っていた箱にいっぱいあった。
私はどうやったら遠くに飛ぶのか、と言うことを研究というと大げさだが、いろいろと試していたりした。大抵の子は、手が地面に当たるのが嫌なので、あまり思いきり手を振らない。私は野球の投手のようなフォームで地面すれすれまで手を振って振りぬいていた。
そうしてやっているうちに、時々、妙に遠くまで飛ぶ時があった。それも、自分のメンコが地面にあたってから、ワンテンポ遅れて相手のメンコが飛んでいく。
メンコが地面に当たった時に相手のメンコが少し持ち上がって、そのあとから手を振りぬいた時の風で飛んでいくのではないか?
そう思ったので、ちょっと試してみた。メンコの片方を小石にのせて少し持ち上げて、掌の風だけで飛んでいくのかやってみた。
結果は予想通りだった。ただ、何時も同じ通りには行かない。掌を広げたり、風が当たりやすいように手の振り方を考えたり、メンコを離すタイミングも何度もやりながら覚えていった。そして、何時でも遠くへ飛ばせるようになった。
「なんでお前そんなに飛ばせるんだよ」
そう言ってきた子に、上記の説明をしてみせたら、
「遊びのためにそんなこと考えるとかどうにかしてるよ」
と呆れられた。
こういう工夫は他の遊びでもやっていて、ゴロベースでは指を伸ばして親指の付け根にボールが当たるようにすると、良くボールが飛んでいく。
野球のアッパースイングと同じで、すくい上げるように斜め上に振るのでボールがよく上がる。これも地面すれすれに手を振らないといけないので練習は必要だった。良いあたりだと30メートルくらいは飛んでいくので、大抵ホームランになった。
私が打つと、何か手に持って打っているんじゃないかとインチキを疑われたりした。どうしてそんなに飛ぶのか、の、説明をすると、メンコの時と同じで呆れられることが多かったが、私と同じように練習するような子は同じフォームで打てるようになったりもした。
まあべつにこれで何かの役に立つようなことなどは特に何もない。
中学生以降はもうメンコやビー玉とか、そんなガキっぽい遊びなんて誰もすることなど無くなっていったので、私が友達のあいだで一目置かれる、なんてことも無くなっていった。
ちょっと何か考えて工夫するというのは、その場しのぎでなんとかしてしまうような器用貧乏になっただけだろうか。
何かに役立てようとかではなく、楽しみのために工夫しているときが一番楽しかった。今もそれは変わっていない気がする。