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変わる街

[1]変わる街
 育った街はなんだかところどころ暗い。別所さんの誘いで育った街を歩くことになった。学生時代過ごした街を歩いてみると、朽ちた建物がそのまま放置されている。行政が中途半端に放置した地区がある。コンクリートが割れ、間から雑草が顔を覗かせている。かつてそれなりに活気があったものや場所から人が消え、手入れがされなくなって表面がうす汚れた建物を眺めながら歩いていた。
 商店街は僕が学生の頃よりもうっすらと活気が減っていて、人も建物もみんな歳を取っているはずなのに、それでもなお活気が満ちているように見せてくれた。しかし、多分、それは無理をしている。この活気もあと十年経つと色々と変化してしまうはずなのに、まるでこれからも衰退が訪れないかのような、延命処置をしているように見えてしまった。
 すべてがゆっくり、衰退に向かっている。それはきっとある種の定めで良いも悪いもないのだけれど、街はかつてと変わらないふりをして、ずっと変化している。すこしずつ未来にバトンタッチしたり、しなかったり、できなかったりしている。少し悲しみはあるけれど、そんなものだと思うところも幾分かある。

[2]変わらない店
 大学生の時に働いていたお好み焼き屋が商店街の出口にあるので前まで行ってみると、準備中の札が下げられていた。潰れてはいなかった。うっすら見える店内を覗いてみると、奥で見覚えのある人が休憩していた。当時一緒に働いていた店長だった。アピールしているとすぐに気づいて扉を開けてくれた。
 「休憩中すみません」「久しぶり!どうしたん!急に!」「ちょっと前を通ったもので…」約7年振りの再会で、足早に近況を伝え合っていた。
 「それと当時一緒に働いていた母ですが、今年亡くなりまして」「え、あぁ、そうなん…ちょっとびっくりしたわ、早いな…」
 母は僕が大学生の頃「土日やることないからちょっと働きたいねん」と話していたので、「じゃあ僕がバイト行ってるお好み焼き屋で一緒に働く?オーナーに話してみるよ」といった具合で、週末は母と同じシフトで働くことがしばしばあった。バイト中僕は照れていたけれど、母はなんだか嬉しそうだったのを思い出していた。当時この店長にもよくお世話になっていた。
 「勝手ながら母のことを報告できてよかったです。店長も健康診断行ってくださいね、またお好み焼き食べに来ます」「おう、ありがとう。」変わり続ける街で、変わらない人に会ってから、この街を後にしたのだった。

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