ガストバーナー危険浪漫譚/2023.03.18@池袋Adm(マッチングツアー東京編)
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今回はいつにもまして機材車が小さかった。しかし小さければ小さいほど、僕達の会話は濃くなる。名古屋から東京までの車内では、やはりまた人生や人間関係の話ばかりしていた。
僕が貧乏で良かったと感じるのは、頭でっかちな人間にならずに済んだからだ。着るもの、食べるもの、寝るところ、全ては当たり前ではない。頭で分かっていても実際に不自由しなければ、切迫したありがたみは湧いてこない。母は僕に、その当たり前を当たり前のように供給してくれたけれど、その代わりに毎日毎日身を粉にして働いて家に居なかったので、当たり前の代償はそれなりにあった。
頭で分かったような話をする人への嗅覚が強いのは、この生い立ちからくる能力だった。ガストバーナーの皆はそれぞれ、これまでの経験から特殊な能力を身につけている。そんなことを話しながら、脳裏にはずっと残したままの仕事がこびりつきながら東京に着いた。
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Yellow Studsのみなさんは、不思議なあたたかい魔力を持っていた。全員が上級魔法を使えるようなパーティーだ。実は『ALTEMA2013』というコンピレーションアルバムでEmu sickSと同じCDに収録されていたのだけれど、その話は野暮になりそうなのでしなかった。
ライブから立ち振る舞いから、とにかく心にスッと入り込んでくるのが自然な方達だった。あれは魔力。素敵な魔力。もっと早くにマッチングしていれば、もっとインコの話とかで盛り上がっていたかもしれない。僕はいずれモモイロインコを飼いたいので、そういう話もしたいなぁ。これからも仲良くしましょうね。マッチングしたのだから、これからが大事。
我々ガストバーナーのライブはいかがでしたでしょうか。
ライブ中にも関わらず、ドラムを叩きながら「よく自分、体が持つなぁ」と思っていました。いつもより四肢がぶっ飛びそうなライブでしたが、皆さんのお陰でとにかく楽しかったです。色々大事なものを、何度でも確かめさせてくれてありがとうございます。嘘偽りなく、皆さんからパワーをもらっています。
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ライブ後急いでお酒を飲みましたが、いつものようにエンジンがかかる頃には帰る時刻になっていました。帰りの車では、僕とはるきちさんで色々話していました。
結局幸せって何なんだろう、という話ばかりが主題になり「こうやってこの年齢になってもライブして、楽しくて、みんなニコニコしてくれて。会社に勤めていると得られる安心感やレールに乗った幸せではないけれど、こっちの生活の方が自分にとって幸せなんだよなぁ」みたいなことをはるきちさんは言っていた気がする。
定型の幸せは、確かに幸せだ。けれど、それはあくまで一つの形でしかなく、違う形の幸せを否定する根拠にはならない。型にどうしてもはまらない幸せを、深夜に車を走らせながら追い求めてしまうのだった。
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5時過ぎくらいになると僕もうっかり車内でうとうとしてしまい、気づけば近鉄名古屋駅まで送ってもらっていた。そこから大阪までは電車でほぼ寝ていたので記憶がない。
10時前に家につき、洗濯機を回し、お風呂に入ると、さっきまでの名古屋東京での出来事は夢だったのかと思ってしまうほどの日常が襲ってきた。横になって微睡んでいると、本格的に眠ってしまい、気づけば夜だった。
やっぱり昨日の出来事は夢だったのかもしれない。そんなことを思いながら、干すのを忘れた洗濯物に気付き、やっぱり夢じゃないのかもしれないと思いながら、またスイッチを押して洗い始めるのだった。