冬の蝉
子供の頃から今に至るまで、道路で死んでいる猫や蛇、虫たちをみつけると、いつも草むらに移動させています。
数年前まで、家が建てられたときに一緒につくられた駐車場とと、家族と自力でつくった駐車場がありました。
そんなある日、冬の季節に、自力でつくった駐車場の土のなかから、サナギから羽化しかけた蝉が死んでいるのをみつけ、とてもショックをうけました。
七年間くらい暗い地中で生活してきて、幼虫からサナギ、そして成虫になって外の世界を飛び回るのは一週間。あるいは二週間。とても短い期間です。
人もまた、長い下積みをしてから成功する方もいれば、卵のとき、幼虫のとき、サナギの状態で人生を終えてしまう人たちがいます。
儚いのか、それもまたあるべき人生なのかわかりませんが、蝉の長い地中の生を思うと、ほんとうに申し訳ないと思いました。
途中でつくった駐車場ですから、すでに地中に蝉の幼虫がいたのでしょう。
冬場、暖気運転などで、地中に暖かさが届いていて、夏だと勘違いさせて地表にでてしまったのではないかと思いました。
以来、その駐車場に車を置くことをやめています。
一人暮らしなので、今は、駐車場はひとつでもよいということもあります。
雑草や樹木ですでに駐車場ではなくなっています。
夏になり、蝉がさかんに鳴き始めるたびに、成虫になり、青い空を飛び回れなかったあの蝉のことを思い出すのです。
蝉ちゃん。ごめんね。
(了)
星谷光洋MUSIC Ω『My Day』
※トップ画像のクリエイターさんは『kinako_sashiko 』さんです。
ありがとうございます。たしかに、こんな白い感じの羽化しかけたセミでした。
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