第26話防音シートから見える景色
ドカタのにいちゃんが立ち上がりこちらに歩いてきた
浅田「どう調子?」
にいちゃん「ボチボチっすねー」
浅田「もううちのポーションは予定通り終わるやろ?」
にいちゃん「そうすね。もうほぼ終わりなんで安心してください」
浅田「あ、こっち、新人研修で今日ちょっと一緒やねん」
TK「おはようございます。お世話になります」
にいちゃん「あ、おはようございます」
浅田「いや、こんなやつにそんな畏まらんでええで(笑)」
にいちゃん「こんな奴て何すか!(笑)まぁ、そうですけど(笑)」
現場のにいちゃんと浅田の距離は非常に近く、客先のワーカーなのか、自社のワーカーなのか、イマイチ関係がわからない
浅田「最近おもろいことないの?」
にいちゃん「こないだパチンコで5万すったくらいすかね」
浅田「いや、全然おもんないから(笑)」
にいちゃん「あ、そういや、裸のねーちゃんが見れる話、しました?」
浅田「え、何それ聞いてない」
にいちゃん「ここから、裸のねーちゃん覗けるんです」
浅田「覗けるてなんやねん?」
にいちゃん「のぞけるというか、丸見えなんですよ。ここなんですけど、今はいませんね」
5階の現場から、向かいにあるマンションの一室を指差した。
もちろん、建設現場のため、防音シートで全体が囲まれているので、外から中は見えないが、光の関係で中から外は見えるようになっている。
にいちゃん「ここの5階の部屋に、綺麗なねーちゃんが住んでるんですけど、窓もカーテンも開けっぱなしで、裸でウロウロしてるんすよ」
浅田「まーじ!?何何?露出狂?」
にいちゃん「いや、たぶん、窓の外が全面こんなデカイ建設現場やから、誰も見てないと思ってんじゃないすかね。」
浅田「いやいや、建設現場やねんから、人おるのわかるやろ(笑)」
にいちゃん「いやー、たぶんあっちから見えてないから、気づいてないんでしょね」
浅田「はー。ってか、何でもっと早く言わんねん!もうこの現場終わりやかや、俺来る機会ほとんどないやん(笑)」
にいちゃん「いやー、たまにここに覗きにだけ来たらええんじゃないすか?」
浅田「それただの覗きやんけ(笑)」
終始この調子で、ふざけた話ばかりをして、現場を後にした。
浅田「さっきの現場ももう2週間早かったら、うちの連中が施工してるの見せてあげれたんやけどなー。一応、大きい現場やし、せっかくやから見てもらったんやわ」
TK工房「そーなんですね」
浅田「いつもあんなアホなことばっかり言うてるわけちゃうからな(笑)まぁ、言うてるけど」
TK工房「言うてんすか(笑)」
乗って来たカローラフィルダーに乗り込んだ。
エンジンをかけていると、目の前を大きなトラックが通り、建設現場に入っていくのが目に入る
浅田「ああ、思い出したけど、この現場も初期の頃、現場監督とメチャクチャ喧嘩してな。」
TK工房「喧嘩ですか?」
浅田「なんかうちから納品物が届いてないとか言うて、怒鳴りながら電話来てな。ほんで納期確かめたんやけど、別に予定通り3日後なんよ。それ伝えたら、相手側のミスで、納期早まったことうちに連絡して来てないだけやってん」
TK工房「えー、それでどうしたんすか?」
浅田「それでも工期が遅れるから今すぐもってこいとかぬかしよるから、こっちもキレそうなりながら、必死こいて翌日に間に合わしたんよ。もう俺がトラック運転して朝一で運んでん。ほんなら現場入られへんねん」
TK工房「え?なんでなんすか?」
浅田「もってこいとか言うときながら、そいつその日休んどんねん。しかも現場に俺が行くこと連絡してへんから、入れてもらわれへんし、朝から待ちぼうけやで。俺もブチ切れて電話して、あいつに怒鳴りちらしたったわ。お前が持ってこいてゆうたんちゃうか!ゆうて。それで電話で喧嘩よ」
TK工房「えー、、でどうなったんです?」
浅田「いや、別にどうもなってへんよ。次の日に納入しただけの話。こんなもんやで。現場なんて。おたくらメーカーの社員はこんな時、絶対出てけーへんし、こんな事が起こってることすら知らんけどな(笑)」
TK工房「はー、、、そうですか、、」
浅田「ほな、昼飯食いに行ってから、奈良行くか」
TK工房「はい、よろしくお願いします!」
続く
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