第27話 現場の意見
奈良に向かって車を走らせる中、腕時計の針はちょうど12時をさしていた
浅田「昼飯やけど、俺がよく行ってるとこでええやろ?」
TK工房「もちろんです!」
そこから国道をそれて、5分ほど行ったところに、個人経営の定食屋があった
店の向かいに路駐し、引き戸を開ける
大将「いらっしゃい!あ、毎度!」
浅田「こんちわー。日替わり二つね。ご飯大盛りで」
大将「はいよ!」
浅田「あ、日替わりでええやろ?ご飯も大盛りにしたけど」
TK工房「はい!全然大丈夫です!」
奥のテーブル席に案内された。
浅田「あー、腹減ったわ。何もしてへんけど腹は減るわ」
TK工房「僕もペコペコですわ」
テーブルに備え付けてあるピッチャーでグラスにお茶を注ぎながら、店内を見回していた
浅田「あ、そうそう。自分、企画部やって言うてたな?たまに、企画部が主催する研修ってのがあって、子会社の俺らまで参加させられるやつあんねんけど、もうあれ辞めてくれ(笑)」
TK工房「どんな研修なんですか?」
浅田「知らん。営業研修とか、毎回テーマ変わってたと思うけど、毎回聞いてないから覚えてへんわ」
TK工房「役に立たないです?」
浅田「立つわけない。現場に来もせーへんやつが、何を教えれんねん?営業やってへんやつが、何を教えてくれるんや。アホか」
TK工房「え、うちの企画部の社員が講師やってるんです?」
浅田「外部から講師呼んでても一緒。全然やってることちゃうのに、この前なんかも元保険の営業マンとかが来てたわ。そんな一般人相手の営業について語られても全く入ってけーへん。ヤクザ相手に営業したことありまっかー?てなもんやで」
TK工房「はー、確かにどうせやるなら、ちゃんと受ける側のビジネスにカスタマイズして欲しいですねー」
浅田「そもそも研修が何で必要なんかってとこから考えて欲しいよな。少なくとも俺らは研修やってくれなんて言うてへんからな」
TK工房「なるほど。」
浅田「営業成績上げるには、営業マンの能力を上げなあかんって話になってんか知らんけど、失礼な話やろ。どんな営業してるかも見てへんくせによ」
(相当、ムカついてるやん、この人。こういうのとかメーカーの人間にはホンマに伝わってへんのかな?そして伝わってへんねやったら、もっと直接言うたらええのに。俺みたいなペーペーに言うんじゃなくて)
浅田は気さくで面白く、良い兄ちゃんという感じだが、メーカーに対する不信感は非常に強いようで、話がメーカーに及ぶと悪態を吐く事が多かった
大将「はい、日替わりでーす」
運ばれてきたのは大量の揚げ物と嘘みたいに多い白ご飯、味噌汁、おしんこのセット
TK工房「これ凄いっすね!」
浅田「せやろ?めちゃ美味いぞ」
早食いに自信のあるTK工房だが、食べ切るのになかなか時間を要し、最後の唐揚げを口にするころにはベルトの穴を緩めていた
先に食べ終わっていた浅田は笑いながらグラスにお茶を注いでいる
浅田「よし、ほなそろそろ行くか」
机の横にかかっていた伝票を掴み、レジに向かった
大将「日替わり二つで1500円になります」
浅田「2000円から」
TK工房「え?」
浅田「えーよ。昼飯くらい。どうせ今日くらいしか奢る機会ないんやし」
TK工房「ありがとうございます!御馳走様です!」
店を出る頃には1時を回っていた
(いやー、しかしご飯大盛りは多かったなー。腹いっぱいやし、移動中寝てまいそうや)
エンジンをかけて、クーラーをつける浅田
浅田「いやー、眠いな。ちょっと寝よか」
TK工房「はい?」
浅田「いや、お前はどっちでもええけど、俺ちょっと1時間くらい寝るから」
そういうとリクライニングをバッタリ倒して浅田はすぐにイビキをかきはじめた
(こ、こんなんありなの??)
続く
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