藤本つかさの中のさくらえみ/2016年5月4日 ベストフレンズvsななざくら
「横浜文体でアイスリボンは最終回です。」
2016年4月23日のアイスリボン722、そこに立っているのは、確かにアイスリボンの創始者であり、我闘雲舞の代表である、さくらえみ選手だった。
アイスリボン史上最大のビッグマッチ、5月4日の横浜文化体育館大会のセミファイナルは、紫雷イオ選手・岩谷麻優選手のサンダーロックの参戦が、おそらくは余り面白くない事情で流れた結果、藤本つかさ選手・中島安里紗選手のベストフレンズvsさくらえみ選手・高橋奈七永選手のななざくらに決定した。
最近アイスのファンになった人は、かつてさくらさんがどれだけの存在感で君臨していたか、想像出来ないかもしれない。昔からのファンは、まさか?遂に!今さら・・・それぞれの受け止め方があったと思う。今のアイスは、さくらさん時代のフォーマットを踏襲しつつも、ストレートなプロレスの色を強め、新たな風景を作り出している。
一方のガトムも、ハッピーなアイディアを次々と実現するさくらさん的プロレスの純度を増しているように見える。
今のガトムの状況からすると、さくらさんがアイスに上がるメリットは何もない。しかし、さくらさんはアイスリボンに上がる決断をした。
戦いを拡散するには、刺激的な言葉が必要である。乱入、ツイキャス、ニコプロ、メディアの動きが鈍ければ、自ら発信して活路を開くのが、さくらさん流。刺激的な言葉と裏腹に、さくらさんはこの対戦の価値を高めるための最も有効な行動を取っているように見えた。
アイスリボンファンとしての自分には、さくらさんがピンチに手を差し伸べる白馬の騎士のように見えた一方、ガトムファンとしての自分は、アイスリボン、そして藤本さんが、さくらさんの今をどう考えているのかが気になった。
迎えた文体当日、ななざくらは、個別のテーマ曲で入場。前奏付きの「さくらゴーランド」を聴くと、嫌が応でも胸が高鳴る。
ベストフレンズは、何時もの「フレンズ」で入場。結果論だが、藤本さんがななざくらと向き合うには、ベストフレンズという熟成の仕方が必要だったのだと思う。
奈七永さんの気持ちは、シードリング後楽園大会で対戦する中島選手に向かっていた。それぞれのテーマは、はっきりしていた。
いつも、さくらさんがコールを求めると対戦相手のコールが発生するが、この日ばかりは、さくらコールが発生。やはり、プロレスファンの感性は素晴らしい。
再会のロックアップ。藤本さんらしい、弾けた入り方。ずっと両者を見守り続けて良かったなあと思った瞬間。
自らを母親に例えられることを嫌っていたさくらさん。しかしやっぱり、藤本さんが母親に甘える娘のように見える。
こういう試合になると際立つのが、さくらさんの職人ぶり。
全ての技に力感がありつつも、形が綺麗!
張り合いの展開も、藤本さんの方が張り切れないように見えた。
奈七永さんは、常に変わらないハイクオリティな試合運び。
ストンピングで、ここまで感情表現出来るのは凄い!
定番のロメロスペシャル。
やっぱりさくらさんの表現力は凄い!
藤本さんの表情!
見守るアーサさん、里歩さん、真琴さん。アーサさんの目に、普段と違うさくらさんは、どう見えたのかな?
中島さんがさくらさんをスカして奈七永さんを攻めたときの、さくらさんの表情。視線を惹きつけるセンスが素晴らし過ぎる!
藤本さんのスポーツライクな動きの良さが、今のアイスリボンを牽引するファイトスタイル。
正直、この試合の中島さんのスープレックスは、ブリッジが崩れ過ぎて危険に見えた。プロレスの激しさと危険さは、区別するべきだと思う。
しかし、遠慮のない激しさは、中島さんの良いところ。
相手が激しければ激しさで返す奈七永さんの凄さ。
息ぴったりの合体技!
中島さんのダルマ式ジャーマン。この日はやっぱりブリッジが低い。
頭突き!
藤本さんのドロップキック!
体格差がある相手に挑んでいく藤本さんの姿は、アイスリボンの代表らしく、胸を打つ。
さくらさんの膝が藤本さんの背中に突き刺さる。
この表情ですよ!
かつて志田さんとのマッスルビーナスの連携だったダブルのミサイルキック、今は中島さんと。
一度目のビーナスシュートは、さくらさんが叩き落とす。
やはり、さくらさんは表現力の塊。
ムーンサルトは自爆。
圧巻だった、ダブルの冷蔵庫爆弾。
声を出す帯広さん。息を呑む「ことり」
さん。ガトムメンバー、何を思う?
二発目のビーナスシュートは直撃。崩れ落ちる姿も美しく。
藤本さん、渾身のカウントスリー!
さくらさんの心境は、いかに。
アーサさんが見たこと、感じたこと、未来につながるかな?
ウエットな藤本さんと、笑顔の中島さんが対照的。ウエットさこそが、今のアイスリボンの求心力だと思う。
終わってみれば、幻のような試合だった。それは多分、ガトムとしてのさくらさんが希薄だったことによると思う。例えば試合後に「ことり」さんがマイクアピールをすれば、ずいぶん印象が違っていただろう。時間というのは、未来に向けて開いていてこそ、リアリティが生まれるのだから。
5.4文体は、藤本さんが思い出の中のさくらさんに勝利して別れを告げた、そんな印象の試合だった。さくらさんがアイスリボンを支え続けた藤本さんに与えたご褒美。結局のところ、それは母の愛に似ていた。その構図は一方的であり、少し残酷でもある。
いつかきっと、藤本さんがこの日のさくらさんのような立場で試合をする日が来るだろう。その時にこそ、再びこの試合に命が吹き込まれるのだと思う。