労働判例を読む#272

【ホームケア事件】横地判R2.3.26(労判1236.91)
(2021.7.16初掲載)

YouTubeで3分解説!
https://www.youtube.com/playlist?list=PLsAuRitDGNWOhcCh7b7yyWMDxV1_H0iiK

 この事案は、送迎担当者Xが未払賃金があるとしてデイサービスセンターYに対してその支払いを求めた事案で、裁判所はXの請求の一部を認めました。

1.裁判所の判断
 この事案は、Xが週何日勤務するのかが明確でなかった点に特徴があります。すなわち、週5日程度、という記載が労働契約書にあるものの、具体的な勤務はシフト表によって指定されることになっていたのです。
 そこで裁判所は、①XYの合理的な意思から、週4日勤務の合意があったと認定し、②シフトに入らなかった日のうち、Xの仕事が無い、という理由の日については、Xが乗車拒否したわけではないとしてYの責に帰すべき事由によると認定し、賃金請求を認めました。③シフトに入らなかった日のうち、Xの希望によって休みになった日については、Xが年休を行使したとして、賃金請求を認めました。
 シフトに入らない限り具体的な就労請求権がない、したがって賃金請求はできない、というイメージが先行していますが、賃金請求ができる場合のあることを、この判決が示したのです。

2.実務上のポイント
 訴訟手続きの中で、Yが、Xの勤務状況やシフト表などの証拠提出を拒否しています。そして、このことが上記①~③の認定に際し、Yの不利に評価されています。
 どのような打算や感情的な問題があって証拠提出を拒否したのか分かりませんが、それによってYに有利な判断がされたわけではありません。近時、例えば偽造した証拠を提出した事例もありますが、証拠をコントロールすることで裁判の内容もコントロールできる、というわけではないことを理解しておく必要があります。

※ JILA・社労士の研究会(東京、大阪)で、毎月1回、労働判例を読み込んでいます。

※ この連載が、書籍になりました!しかも、『労働判例』の出版元から!


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