労働判例を読む#501
【国立大学法人東北大学(雇止め)事件】(仙台高判R5.1.25労判1286.17)
この事案は、大学職員の業務を通算8年間行った従業員Xが、大学Yによる更新拒絶を無効として争った事案です。2審も、1審と同様にXの請求を否定しました。
1.実務上のポイント
1審と同様の判断が示されたので、そこで指摘したポイントは同様に維持されています。なので、「国立大学法人東北大学(雇止め)事件」(仙台地判R4.6.27労判1270.14、労働判例読本2023年版161頁)も合わせてご覧ください。
2審では、更新の期待に関し、Xが新たな主張を追加し、そこに2審も判断を示しているため、より議論が整理されてきたように見えます。
すなわち、結果的に5年を超える期間勤務してきたものの、更新の期待が否定される理由として繰り返し指摘されているポイントは、恒常的に存在する業務かどうか、という観点よりも、基幹的な業務かどうか、という観点の方が重要であること、しかもXの担当業務は何度か変更されていること、何度も繰り返し雇用されても、更新ごとの判断が形骸化していたわけではないこと、という点です。勤務期間などの形式を見れば、5年を超えていて、5年を超えた後にも更新されていることから、更新を期待させない趣旨の規定の効力も否定され、あるいは弱まったと評価されそうですが、勤務の実態などによってこれが否定されていることから、更新の期待は、形式面だけでなくその実態も合わせて考慮されることが示された事例、と言えるでしょう。
※ JILA・社労士の研究会(東京、大阪)で、毎月1回、労働判例を読み込んでいます。
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