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労働判例を読む#623
今日の労働判例
【佐山鉄筋工業・海外事業サポート協同組合事件】(大阪地判R5.9.28労判1314.80、一部認容・一部棄却、控訴)
この事案は、ベトナム人技能実習生Xが、会社Y1と管理団体Y2に対し、在留期間延長のための必要な手続きを行わなかったことなどにより、在留期間が延長されずに勤務を継続できず、さらに、不法滞在として30日間収容されたことなどに基づく損害賠償を請求した事案です。
裁判所は、Xの請求を一部認めました。
1.Yらの義務
ここでは、技能実習第1号ロによって滞在していたXが、より技能を向上させるために認められる技能実習第2号ロによる滞在(在留期間の延長を伴います)を希望していたのに、Yらの管理不足や関係省庁への確認不足などによって、上記のようなトラブルが発生したことが、Yらの義務違反とされました。
在留資格の付与は行政機関の裁量ではあるものの、資格要件が定められていて、X自身が後に別の会社で技能実習第2号ロを取得し、Y1の他の従業員もこれを取得しているなど、実際に資格が取得できた点や、Yらが関係各機関に適切に確認しなかったり、その説明に従わなかったりした点も認定されており、YらのXに対する配慮の欠如が浮かび上がっています。
外国人労働者の管理に関する様々な論点が議論されており、実務上参考になるほか、従業員が会社で安定的に勤務できるための配慮の必要性についても、その重要性を改めて認識させられます。
2.実務上のポイント
本事案では、岐阜の労働組合がベトナム人の技能実習に詳しい、という話を聞いたXが、実際に岐阜で新たな在留資格、しかもYらを通して獲得できなかった第2号ロを取得しました。
ベトナム人のネットワークでの口コミのようなノウハウでしょうか。もちろん、デマや嘘なども混じっているでしょうが、口コミやSNS等の情報やその伝播力は無視できない状況にあります。
その意味でも、Xの希望や意見をもっと真摯に受け止めておくべきだったかもしれません。
※ この連載が、書籍になりました!しかも、『労働判例』の出版元から!