労働判例を読む#592
今日の労働判例
【よこはまシティユニオン(ユーコーコミュニティー)事件】(東京高判R5.11.15労判1308.44)
この事案は、会社Xが従業員Kに対し、パワハラの不存在の確認を求める訴訟等の提起が、Kの所属する組合Yに対する不当労働行為であるとして、Yが労働委員会に救済を申し立てたところ、この救済申し立てが違法であるとして、XがYを訴えた事案です。つまり、①Xの訴訟提起に対する、②Yの救済申し立てに対する、③Xの訴訟提起です。
裁判所は、Yの救済申し立ては違法ではないとして、Xの請求を否定しました。
1.実務上のポイント
訴訟の提起は、国民の裁判を受ける権利に基づくものであり、訴訟の提起が違法とされる場合は限定的ですが、それでも、訴訟の提起が違法とされる可能性はあります。同様に、労働委員会に対する救済申し立ても、限定的ですが、それでも、救済申し立てが違法とされる可能性はあります。
このことから、Yは、Xによる訴訟提起が違法であると評価されることを目指して、救済を申し立て(②)、Xは、Yによる救済申し立てが違法であると評価されることを目指して、訴訟を提起しました(③)。
その結果、裁判所は、②の申し立ては違法ではないとして、③の請求を否定したのです。
結果的に②の申し立てが否定されるかどうか、という結果から振り返って評価するのではなく、②の申し立てにそれなりに合理性があるか、という申立時点から将来に向かって評価する、という視点で判断されています。
訴訟の提起が違法かどうか、という問題も、同様に、結果から振り返るのではなく、将来に向かって評価する、という視点で判断されており、手続的な違法性の判断の方法について、参考になります。
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