労働判例を読む#462
【巴機械サービス事件】(東京高判R4.3.9労判1275.92)
※ 司法試験考査委員(労働法)
この事案は、男性=総合職、女性=一般職という状況が定着している会社Yの人事制度に関し、女性の一般職員2名、Xらが、違法な性差別であると主張し、争った事案です。
1審(横地判R3.3.23労判1243.5)2審いずれも、Xらの請求の一部を認めました。
1.何が違法か
2審は、1審の判断を概ねそのまま採用していますので、詳細は1審の解説をご覧ください。
ここでは、ポイントだけ簡単に整理しましょう。
まず、総合職と一般職に分けること、総合職は全て男性で一般職は全て女性という状況にあること、Xらを一般職として採用し、一般職に配属したこと、については、それだけでは違法でないとしました。
しかし、Xらに総合職に職種転換する機会を実際には与えていなかった、そのことで「総合職は全て男性、一般職は全て女性」という状況を固定化していた、という点を違法としました。
すなわち、採用や配置の段階で男女差が生じたことは違法ではないが、それを固定化してしまった(職種転換の機会を与えなかった)点が違法である、という内容です。
2.実務上のポイント
女性には家事があるから、総合職のような仕事は任せられない、補助的な仕事しか任せられない、という考え方が背景にあったのかもしれません。
けれども、人口減少・働き手減少の中で、男女の役割分担、という発想自体が変容し始めています。
本事案では、職種転換の点だけが違法とされましたが、採用や配置の点も含め、人事制度の在り方について考えさせられる事案です。
※ JILA・社労士の研究会(東京、大阪)で、毎月1回、労働判例を読み込んでいます。
※ この連載が、書籍になりました!しかも、『労働判例』の出版元から!
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