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労働判例を読む#156(有料解説動画付)

「学校法人南山学園(南山大学)事件」名古屋地裁R1.7.30判決(労判1213.18)
(2020.5.22初掲載)

 この事案は、大学Yの学部教授Xが、65歳の定年後再雇用されなかったことを不服とし、再雇用されたはずであるとして、教授としての地位確認などを求めた事案です。
 裁判所は、地位確認を含め、Xの請求の主要な部分を認めました。

1.懲戒処分の有効性

 この事案が少し込み入っているのは、Xに対する譴責処分があり、それが理由で定年後再雇用されなかったことから、まずは譴責処分の有効性が問題となった点です。結論から言えば、裁判所は譴責処分を無効としました。
 これがどのような行為に対する譴責処分かというと、Xが兼任している大学院の教授について、大学院生からハラスメントの被害申告があったために、Xがその調査担当となったことがきっかけです。ところが、Yは、①Xが他の大学院生2名にハラスメント被害の有無を調査し、情報を漏洩した、②当該教授への懲戒処分前に、教授会を招集し、情報を漏洩した、③当該教授の配偶者である教授について、異なる扱いをしたこと、を根拠に、Xに譴責処分を科しました。
 ところが、裁判所の認定した事実を見ると、Xは非常にまじめに、ハラスメント調査担当の業務を遂行していました。Xがヒアリングした2名の大学院生のうち1名は、既にこの話を知っていましたし、他言しないように釘を刺すなどの配慮もしていました。教授会の招集も、主任教授の指示によるものです。また、被疑者となる教授の配偶者である教授に対しても、ハラスメントの被疑者の配偶者として、教授会に出席できないようにしたものの、個別に事情を説明したり、教授会の冒頭で意見陳述の機会を与えたりするなどの配慮をしていました。
 普通に考えて、相当真面目に、丁寧に調査を行い、周囲に配慮しながら対応したと評価できます。権限の濫用どころか、むしろ逆に職務に忠実だった様子がうかがわれます。これで、対応が不適切と非難されるなら、誰もハラスメント案件の調査など引き受けられなくなってしまうところでしょう。

2.再雇用契約の成否

 まず、ルール(規範)です。
 裁判所の示した内容から考えると、①定年後再雇用の期待に合理的な理由があること、②継続しない特段の事情が無いこと、が満たされれば、その結果、雇用関係が存続する、という法律効果が発生することになります。
 次に、あてはめ(事実)です。
 本事案では、過去、1年だけで良いと自ら申し出た1名を除き、約70名の教員が68歳まで勤務してきたこと、上記のとおり定年後再雇用しない理由とされる懲戒処分について、懲戒処分が無効と評価されること、を考慮し、上記①②該当性を認め、③雇用関係の存続を認定しました。

3.実務上のポイント

 本事案では、定年再雇用後の処遇条件が明確だったことから、比較的簡単に雇用契約の成立を認定していますが、定年後再雇用が制度化されておらず、個別交渉が必要な事案などでは、雇用契約の成立を認めない裁判例がいくつか見かけられます。
 これを、上記再雇用のルールに嵌め込むと、①②に加え、③再雇用条件が明確に定まっていること、を要件として追加して考えることが、実務的でしょう。

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※ JILA・社労士の研究会(東京、大阪)で、毎月1回、労働判例を読み込んでいます。

※ この連載が、書籍になりました!しかも、『労働判例』の出版元から!


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