雨とラジオのおじいちゃん
夏休み最終日。台風が近づき、ずっと雨。
旅行の疲れもあって、家でダラダラ過ごしていたら、あっという間に夕方になってしまった。
おなかすいたなぁ。夜ごはん、どうしようか。こんな雨ではUber Eatsも頼めないしなぁ・・・と、諦めて、なんとか這い出て一番近いスーパーへ。
イチから料理する気力はないので、取り敢えずデリ(お惣菜)コーナーを物色。デリを2品くらい買って、あとは冷蔵庫にあるものでどうにかするか・・・と、脳内でメニューを組み立てます。ここのスーパーのデリはデパ地下のような量り売りスタイル。ショーケースの向こう側にいる店員さんに、欲しい料理と量を伝えて詰めてもらいます。
デリコーナーでは、カートを引いた白髪のおじいちゃんが、ゆったりとした口調で注文をしているところでした。おじいちゃんの後ろには若い男性。その後ろに私が並んだところで、ふと気が付きました。注文し終わった先頭のおじいちゃんが、じーーっと私を見ていることに。
??知り合いではなない、はず。。もしかして、同じアパートの人??いや、記憶にないなぁ。
それとも、気付かない間に失礼なことしたかしら・・・・首をひねっていると、デリの包みを受け取ったおじいちゃんが、すごいスピードでこちらにやってきました。
思った以上の俊敏さにびっくりして固まっていた私に、開口一番、
「あなたの着ているTシャツ、ラジオのTシャツだよね?」
僕、ラジオ局で働いていたんだよ~、と朗らかに続けるおじいちゃん。
わ!そっか、これを見ていたのか!!
私が着ていたのは、村上RADIO×UNIQLO UT コラボTシャツ!!!
そうそう、小説家の村上春樹のラジオのTシャツなんですよ~
と話していたら、おもむろにiPhoneを取り出すおじいちゃん。
「写真撮ってもいい?」という確認などなく、唐突にシャッターを切り始めたので、こちらも胸を張って背筋を伸ばして応戦しました。
このTシャツを買ったのは、今年の春のこと。わくわくしながら5th Avenueのユニクロに行ったら、棚はほぼ品切れ状態。発売から数日しか経ってないのに!と、アメリカでの人気の高さを痛感する中、辛うじて手に入ったのがこのラジオTシャツでした。
そんなわけで、「これ着てたら、もしかしてアメリカの村上春樹ファンと仲良くなれるかもしれない!」という期待はありました。「好きな作品の話になったら、"Kafka on the Shore(海辺のカフカ)"って言おう~」と決めていたものの、まさかラジオ関係者に声を掛けられるとは・・・・思ってもみなかった(笑)
そうそう、無事に撮影が終わり、おじいちゃんとはバイバイしたのですが。その後、チーズ売り場を物色していたら、再度声を掛けられました。何事かと思ったら、
「背中のプリントも撮っていい?」
と、再びiPhoneを構えるおじいちゃん。そんなに気に入ってもらえたなんて!もちろん、もちろん、と後ろを向いて、今度はチーズの棚の前で撮影会に。バックプリントを撮り終わったおじいちゃんは、去り際、
"I like your T-shirt!!"
にこっと笑い、レジの方へゆっくり歩いていきました。
か、、かわいい・・・!!!
今日、このTシャツを着ていてよかった!これからも、好きなTシャツ着るぞ!
家に帰って奥さんに「ラジオのTシャツを着た子に会ったんだよ!」と興奮気味に話すおじいちゃんを想像すると、このスーパーに足を運ばせてくれた長雨も悪くないなと思えたのでした。