<イチ♥プロ> 福祉職じゃなくても「ちまちま」と、私が出来ることを(後編)
イチゴのイチ推し♥プロフェッショナル 2人目は、おもちゃ作家の風見千恵子さん。
前編では、区のファミサポ事業を通じて知り合ったお子さんに、手作りのおもちゃを届ける「おもちゃ定期便」について伺いました。
後編では、地域の子どものための取組、彼女の原点、そして今後の活動について深堀していきます!
大田区は小学生の遊び場がない。だったらうちに来ればいい。
風見さん(以下、風見);「おもちゃ定期便」の他にも、地域で実践していたことがあります。
私の住む大田区は、交通量が多くて子どもの遊び場が少ないんです。学区内だと小さな公園があるだけで、色々な規制も多くてボール遊びもできない。小学校でも放課後のルールが細かく決められていて、コンビニに行くのは禁止、大人がいないときに家に上がるのもダメ…うちの娘も窮屈そうで。
だったら、うちの家を遊び場として使えばいいと、娘のクラスメイトを自宅に上げるようになり、多い日は10人以上遊びに来ていました。
娘が学校から帰ってくる前に、もう既に何人も遊んでいる事もよくあって。
イチゴイニシアチブ(以下、イチゴ);まるで学童保育ですね… 子どもが毎日10人も来ると大変では?
風見;たしかに掃除などは大変ですが、それよりも、娘が一人っ子だったので友達と遊んでくれることが有難くて。毎回おやつも出して「お腹すいた」と言われたら「じゃあ夕飯も食べていきな」って。
遊び場の少ない大田区で、特に高学年の子どもが大勢で集える場所を、と自宅を開いたのですが、結果的に親御さんたちからも「ありがとね」と感謝されて。
イチゴ;自宅を開放するのは、心理的にも物理的にもハードルが高いのに、平然とやっているのがすごい!
高学年の子の遊び場は、特に難しいですよね。スーパーのフードコートで集まっておしゃべりする、という話も聞きますが、安全面でちょっと心配だし。児童館なんかも飽きてしまうし…
風見;高学年の場合、友達とただ一緒にいてお話しするのが楽しい年ごろですから、安心してそれができる場所が作れればなと思って。
ただ、精神的にも大人に近づく年齢なので、距離感も大事になってきます。
例えば、子ども同士の会話で気になる事があっても、余程の事がない限り介入はしませんでした。
でも、冗談の域を超えて、相手を馬鹿にする言動をしたときは「今のは良くないよ」と諭したことはあります。すると、言った本人よりも、周りにいた子たちがハッとして。「やっぱりこれはダメだよな」と。それ以降はマシになりましたね。
イチゴ;子ども同士だと、最初は冗談でも歯止めが利かなくなることがありますもんね。
そこで適切に介入してもらえると、ちゃんと守られている感じがする。それを機に周りの子たちも動けるようになるし、学習ができる場は大事ですね。
風見;もし私が普段から、ちょっとしたことでも介入していたら、その場だけ良い子のふりをしたり、鬱陶しくて遊びに来なくなってしまう。普段言わない人に言われたからこそ、ある程度効果があったのかと。
イチゴ;ベタベタもせず、押しつけがましくもないけれど、いざというときは守ってくれる大人って貴重です。
子どもの頃に、寄り添ってくれる大人がほしかった。
イチゴ;風見さんが、地域の子どものために動こうと思ったきっかけは何でしょうか?
風見;昔から、子どものために何かしたいという思いはありましたね。
私の幼少期は、実家が裕福ではなく、親が苦労している姿を見て育ちました。
お金がなかったので、洋服も母が手作りしてくれて。編み物や縫物は全て母から習いました。一緒にちくちく針仕事をしたのは、いい思い出です。
一方で、父とは折り合いが悪く、両親の仲もだんだん悪化していくことに悩んでいました。
でも、恥ずかしくて誰にも相談できなかった。「どうせわかってもらないだろう」という、大人への不信感もあったし。
自分の幼少期に、もっと寄り添ってくれる大人がほしかった、という思いがずっとあって。それが今の活動の原点なのかな。
イチゴ;辛い時期にも、お母様とお縫物をした時間だけは、ポジティブな思い出だったと。
風見;そうですね。母はよく「急がば回れ」と言っていました。
例えば、布にアイロンをかけずに縫おうとすると、シワになってしまうんですよ。
そんなとき「急がば回れ」と繰り返しながらアイロンをあてて。人生の教訓も学んだ気がします。
イチゴ;風見さんの作品は、まさに「急がば回れ」ですよね。色んな布を重ねて、ビーズを一つ一つ縫い付けて…気が遠くなるくらいの工程がある。この細かい手仕事は「ああ、急がば回れだなあ」と。
そんな手仕事を「おもちゃ定期便」として、毎月コツコツ継続していたこともすごいなと。
私たちイチゴイニシアチブの活動もそうですが、継続が一番難しい。
最初の一回は、打ち上げ花火のように勢いで出来ても、続けるのは根気がいりますから。
今後は、どのような活動をしていく予定でしょうか?
風見;昨年、新たな取組として、赤ちゃんの遊び場「おもちゃの広場」を開催しました。
子どもだけでなく、親御さん同士の交流の場にもなっていたのが嬉しくて。
大人も子どももくつろげる、そんな場所を作っていきたいなと思います。
イチゴ;地域でコツコツやってきた活動が、どんどん大きくなっていますね!
でも、芯がぶれないところが素敵だし、信用できる。
直に子どもと触れ合うだけじゃなく、一歩引いて、踏み込むよりも見守る姿勢。
静かなアクションに、純度の高さを感じます。
これからも、そのいぶし銀あふれる愛で、大田区の子どもを包んでください!
風見さんの作品:① Instagram ② Twitter ③ Facebook
写真撮影;kisimari
インタビュー場所;子ども食堂「気まぐれ八百屋 だんだん」
※インタビュー中はマスクを着用していましたが、写真撮影時のみマスクを外しています。