手提紙袋一杯のハートチョコやで🍫
1975年のバレンタインデーの放課後に、中学の体育館裏でもらったチョコ。即物的には甘かったのだが、2か月後には体感的にほろ苦い味へと変化してしまった。その日の昼休みと部活前に目撃したコト。
昼休み終了前、友人のいる教室から自分の教室へ移動中、2階と3階の階段の踊り場で、1学年上で3年生のケレ君(it’s the nickname!)が、彼の同級生女子2人のセーラー服の上着のスソを引っ張り、何か言ってるのを目撃。「何やろか?」と好奇心で立ち止まり、耳を澄ませて会話を聞く。
「おい、なんであいつらばっかりににチョコレートやるんや。オレも欲しいやないか」…ケレ君の声がきこえてくる。
ケレ君は噂によると0.110トン。いわゆる巨漢だが、剣道が滅法強く、いわゆる「動ける巨漢」。普段は温和だが、試合では鬼と化すらしい。そのケレ君が女子のセーラー服を引っ張りながら、どう聞いてもスネ気味の声で話しかけてる。そりゃ中学最後のバレンタインデー。オモイデが欲しかったんだろう。女子2人はお互いにしばらく目くばせをしたあと短く耳打ちし、「ほんなら放課後○時○分にここに来てな」と言い残し、3階へと階段を登っていった。
ここまで目撃したなら、そりゃ結末も見たいわなぁ…
放課後、その踊り場。女子2人がケレ君に近づき立ち止まる寸前に、ゆっくり側を通り過ぎてみた。女子の一人が「ハイ、これ!」って、ケレ君に紙袋を差し出した。通りすがりにチラ見をすると、そこには手提紙袋一杯に不二家ハートチョコレートがあふれていた。手渡した女子いわく、「女子たちがお金出し合って、○○(学校に近い、文具から駄菓子まで取りそろえている店の名)にあるハートチョコぜ〜んぶ買うて来たんさ。ケレ、これでも足らんか?」「い、いやぁ、十分やと思うけどなぁ…」
ゆっくり歩みを進めながら、ナイスなシーンを見聞きしたオレ。
彼、そのチョコは友人で分けたのか一人で食べきったのか、オレは聞くに聞けず半世紀近くの時が過ぎた。それでも覚えているんだから、強烈な光景だったってことか。noteに書いたことで、この半世紀持ってきた思いを弔うことにしよう。
※ケレ君は高校卒業後、その体躯と剣道も実績を活かし、治安を守る公務員となり、地域で最も「難儀な場所」を担当。何かで表彰されたのと違うかな? また普段ワタシは「オレ」と言う人称は使わないのだが、当時の気持ちになって、あえて用いてます。