遠泳

目が覚めて
白い光の夜明け
紙のように平板な乾いた日差し

爪先の指の間に水掻きはなく
遠くまで泳ぐことは出来ない

湯船に水を張り
静かな水面の表面張力を眺め
溢れる知性が失われていく様を
心の奥に書き留める

一人ベランダに立ち
庭先の草むらにある葉先の
露のひとしずくを蜘蛛に与えて
鉢植えの物陰に隠れている自然に
一人静かに 梅雨を思う