夜の海

暗い波打ち際に立って
足元の砂を集める夜

海抜0メートル
波は見えず
遠くに白く光っている
湿った風が吹き付け
不気味なほど静まり返って
波が轟いている

底知れぬ太平洋に
身体を奪われそうになる
どこまでが海で
どこまでが身体だったのか
もう区別はつかない

耳と目と
鼻と
潮の香り
群青よりも黒い
夜の海の色
沖を茫漠として見つめる

砂浜を引き上げて
民家の方へ戻っていく
人間の住むところへ