プール

誰もいないプールの水面を見つめていた。水に溶けて消えていきたいと思った。手足を伸ばせば、この身体など水に浸した側から、溶けてなくなってしまうのだと。そうなればいいのだと思っていた。
吐き出した息が熱くて、呼吸をするのが躊躇われた。耳の奥が熱くなって、気付けばひとりで、泣いていた。
この身体に意味などないのだと、証明してほしいだけなのに。

聞こえない声が断片になって飛んでいく。言葉は口の端で僅かに紡がれて、儚く消えていく。
悲しい顔を見せるくらいなら、せめてこの言葉が地面に落ちる前に、拾い上げて笑って見せてほしい。
全てに意味などないのだと、この愚かな身体と引き換えに、笑って証明してほしい。
寂しくてもいい――まだこの身体は生きているのだと。