「選挙に寄せて」 開票数字の読みから
・「○○票」の読みについて
近年の開票結果の○○票の「票」の字の読みが、変わってきているのか、一般の方だけでなく、アナウンサーといわれる人々の発音に違和感があって、音声での開票結果は聞かなくなりました。
専ら、文字情報に頼っています。
標準語が廃止されて久しく、数字にまで方言的な要素を尊重するということなのか、一定の規則に従えば、何の問題も無いのに、と不思議でなりません。
ここで、日本語の数字の読み方を表にして確認してみたいと思います。
数 音読み 訓読み ○票
一 いち ひ いっぴょう
二 に ふ にひょう
三 さん み さんびょう
四 し よ よんひょう
五 ご いつ ごひょう
六 ろく む ろっぴょう、ろくひょう
七 しち なな しちひょう、ななひょう
八 はち や はっぴょう、はちひょう
九 きゅう、く ここの きゅうひょう
十 じゅう とう じゅっぴょう、(じっぴょう:NHK式)
百 ひゃく もも ひゃっぴょう
千 せん ち せんびょう
万 まん よろず まんびょう
音訓では採用されているものを太字に、
○○票の欄で標準的な読みを表記し、変化のある部分を太字にしてみました。
○○票の欄では、
前が「っ」の場合に半濁音「ぴ」、
前が「ん」の場合に濁音「び」、
となっていることがわかります。
例外なのが「よんひょう」。
これは、採用されている数の読みが唯一「訓読み」です。
ここまで日本人は「し(死)」を避けているのです。
発音を分解してみると、
一般的に「b、p、m」の後の音は、「h」→「b」となることから、
音読みの「ん」は「m」であることがわかります。
しかし、訓読み「よん」の「ん」は「n」だということです。
この規則さえ知っていれば何も迷うことはないはずなのですが…。
また、これを知っているからといって、
時間の単位「分」の「よんぷん」を「よんふん」という方がいます。
これは、時間を気にしているのは、急いでいる場合が多い、
ということで力が入り「n」→「m」と変化した結果になります。
「よんふん」なんて言えば、
「聞こえねぇよ、急いでるんだよー。」とか言われそう。
逆に「さんびょう」→「さんひょう」と読まれることが多くなっているように見受けられるのは、「m」→「n」に変化しているためだと推測できます。
一時期、ぽかんと口を開けている子供たちが多くなった、といわれていたことがありますが、日本人の口の緊張が少なくなったということかもしれません。。
あなたはどちらですか?
・日本語は「言文一致」ではない
「は・ひ・ふ」の子音はそれぞれ異なる、とはよく言われることです。
発音記号はいまだ、簡単に表記できないようなので、ここでは省略します。
・「ん」の発音
日本人はほとんど気にしていないのですが、
「ん」の発音には、
「N」(語末)
「m」(語中、b p m の前)
「ng」(同、g の前)
「n」(同、上記以外)
の4種があります。
この点は、音韻の異なる形態を用いる外国人にとっては気になる部分と思われるので、外国人に日本語を教える日本語学校の先生が詳しいと思います。
・「じぢ」「ずづ」の使い分け
同様に困ってしまうのが、「じぢ」「ずづ」の使い分けです。
学校では基本的に「ぢづ」は使わないで、すべて「じず」とする、
となっていると思います。
これを語源や由来から、
盃「さかずき」は、酒+坏で「さかづき」
と表記されたりします。
図鑑「ずかん」、地図「ちず」と発音してみるとわかるのですが、
ずかんの「ず」は舌が上あごに触り、
ちずの「ず」は舌が上あごに触りません。
発音でみると、
「じ」zi「ず」zu、
「ぢ」dzi「づ」dzu、
なので、「ぢづ」の「d」の音を考えてみると、
「d」は舌が一瞬、上あごに触れるということなのです。
語頭の「じず」は舌が上あごに触れて「dz」となっているのです。
「じぢ」「ずづ」を無理に書き分けようとすると、
語頭の「じず」はすべて「ぢづ」になってしまいます。
濁音「g」と鼻濁音「ng」の関係と同様になっています。
どうも私も江戸っ子の端くれなものですから、「真逆」という語は絶対に発音できません。「ぎ」が鼻濁音になってしまうので…。だいたい、真逆という語も熟語ではなく、「まったく逆、まるっきり逆」の略語でしょう。「真反対」なる語も飛び出して、「正反対」はどこへ行ってしまったの?という状態です。
「ら」抜け語も、もちろん使えません。「べらんめぇ」から「ら」を取ってしまったら、体をなさなくなってしまいます。
以前、出典ごとの植物名のデータベースを作ろうとしたときに、「これではいかん」と思い、すべて「じず」で統一することにしました。
やはり、学校で教えられていることが、無難なのかと思います。
・母音の無声化
母音の無声化も、放送ではなくなっているようで、非常に硬い印象になって聞き苦しい。
たとえば、「電気機器」「denkikiki」の「i」は、いちいち声を出さずに口の形だけで息を通すだけにしないと、非常に聞きづらいのです。
「か行」はこの無声化をよく起こすようです。
どこかの方言から普及したものか、私は初期のワープロが普及し出した頃から、字面ばかり気にするようになっている気がしています。
ええー、上の「字面」は「じづら」と入力しないと変換してくれないの?
(私は、複数のローマ字を使い分けるのが面倒なので「かな入力」です。)
・消える連濁
連濁もどんどんなくなっているようで、「河川敷(かせんじき)」を「かせんしき」と読むようになってずいぶんたちます。
私は「かせんしき」と聞くと、「下線・式」という文字が一瞬頭に浮かんで、何かの数式のことかと思ってしまいそうになりました。
「下敷き(したじき)」は「したしき」にならないのかなぁ。
「頃(ごろ)」「位(ぐらい)」も、
最近では、ほとんど濁らなくなっています。
「位(ぐらい)」を「くらい」と発音するのは、
動揺の「これっくらいの、おべんとばこに」とか、
オケラを捕まえて、「おまえの、○○、どーのくらい」
というときにしか、聞いたことがありませんでした。
濁らないというのは、「ふざけた、おどけた」という、意味の含みがあったのです。
・「長音」の破綻
カタカナには音引き「ー」の記号があるのに、ひらがなにはどうして無いのでしょうか?
ひらがな書きの場合は、ひらがなを続けて書くことによって済ましているからです。カタカナの場合とひらがなの場合を比較してみましょう。
あ段 アー ああ
い段 イー いい
う段 ウー うう
え段 エー えい
お段 オー おう
ここで問題になるのが、「え段」と「お」段です、この二者は繰り返しではないのです。
ごく少数の特殊な場合以外には「ええ(肯定の返事)」「おお(大きい)」は使われないのです。
ということは、「えい」「おう」と表記してあっても、実際の音は「エー」「オー」であるのです。
日本語には「エイ」「オウ」という音は無いということになります。
カタカナ書きの外来語の、莫大な増加のため、対応しきれなくなっているのです。
ABCは「エービーシー」「えいびいしい」となります。こうなると、ひらがなで書いてはいけないのです。もう破綻しているのです。
・雑
本筋からはずれますが、こんなこともありました。
植物の標準和名では、
「~タケ」はキノコ類、「~ダケ」は竹類と、
きれいに峻別されているのですが、
「ドコモダケ」には参りました。
「ダケ」なのに、キノコなのです。
違和感の塊。
多分、発案された方は、東北の方なのでしょう。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
今時、こんなことをいう人間もいないと思うので、
参考までに記してみました。
とはいえ、私の時代とはひらがなの「そ」の形さえ異なるので、国語教育がどう変化しているのか、知る由もありません。
(マンガ「おそ松くん」の画像で確認すればすぐにわかりますが、「そ」は上が「曽」と同じくV字型、一学年下の年代から現在の「そ」に変わっています)
本日の投稿は以上にさせていただきます。
皆さん、選挙に行きましょう。
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