ため息のひみつ

全部うっそぴょん、と言って終わらせたい。私が打算的だったことなど一度もないよ。小学生の頃はフラッシュ暗算がめまぐるしかった。誰のことも、好きじゃなかった。

ずっと算数は苦手で、図書委員ばかり引き受けていた。図書室にある数少ない漫画は、多分、全て読んだ。小学館ひみつシリーズ。漫画ならなんでもよかったのかな。チョコレートの作り方も、ニュートンのりんごの話も、図書室の漫画で学んだ。

放課後、廊下の傘立てに座って、『女の子のからだのひみつ』的なタイトルの学習まんがを読んでいたら、通りすがりの上級生にからかわれた。こんなことばかり覚えている。くだらない。おもしろくない。誰のことも好きじゃない。

今日は、授業さぼって喫茶店で頬杖つくやつをまたやっちゃった。たまにしかやっちゃいけないことなのに…。かばんに文庫本が入っていなかった。コーヒーの残りはあとちょっと。帰りたくない。私がため息をつくたびに、あってもなくてもいい星が宇宙でひとつ、またひとつと滅亡しているらしい。君の計算高さが嫌い。徹底した冷たさが嫌い。

私をスパイスにしないで、私を食べて。泣きながら浴槽を磨いて、怒りながら前髪を切った。

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