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いちご王子
ある春のこと。
うちの畑でいちごがなった。1才半の息子の手を引き、いちごを紹介する。息子は目をまんまるにしていう。
「あーん。パクって。(たべていい?)」
「いいよ。いちごをとって洗ってこようね。」
赤いいちごを3つぶほどとって、近くの洗い場で洗う。ふと、息子を見るといちごの前で座り込み、なにやらしている様子。
慌てて戻ると、息子はせっせと手を動かしていちごをつみ、つんだそばから自分の口に入れている。まだ、みどりのいちごもおかまいなく。呆気にとられてしばらく見入ってしまった。
そんなわたしに気づいた息子は、まだみどりのいちごを「あい!」とくれた。
「ありがとう」と思わずいってから、我にかえる。
「このいちごはね。まだ赤ちゃんだよ。もっと大きく赤ーくなったら食べようね。食べる前にお水で洗うともっとおいしくなるよ。」
きょとんとしている息子の口に、洗ったいちごをひとつぶ入れてやる。
「んー!」
こぼれるような笑顔でほほをたたく。
それからの息子は毎日畑で座り込み、赤いいちごを探してはほうばっていた。かがんだ姿が愛らしく、家族から「いちご王子」と呼ばれるように。親バカ、じじばばバカぞろいなもので。
思春期の息子。
今でもいちごの収穫を手伝ってくれる。わたしの背を追い越して、背中も大きくなってきた。それでも、赤く大きないちごを見つけては喜んでいる。
やっぱりかわいい「いちご王子」だ。