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染まる

名前は知らないけれど
最近よく見かける真っ白な花を撮ろうと
首にかけている
デジカメにしては
少し大きめのそれを右手で構える
画面に収めてボタンを押すよりも
その上の小さいところから片目で見て
ボタンを押す方が好きだ

ピントが合うか合わないかのわずかな間
右手の人差し指がボタンを深く押すか押さないかの間
カメラを持っていない
視界にすら映っていなかった
左手がなんだかむず痒い
気のせいかなと思いながらも
嫌な予感と嫌な記憶が
目をカメラから外させる

目がそれを捉えた瞬間に
疑いは疑いではなくなり
私は左手を動かさないように努めながら
静かにカメラを離した右手で
躊躇いもなく左手を叩く

予想していたよりも多く
赤いものが左手の甲の親指の付け根あたりに
広がっている
自分のだけのだろうか
他の人のもだろうか

焼けた肌の上には似合わないほどの鮮明な赤

私は再び右手でカメラを持ち
片目で白い花を捉える

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