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今日の一冊 vol.10《星野源-いのちの車窓から-》

ご本人はおそらく、あまり好きではないだろう言葉を口にせずにはいられない。

やっぱり、すごいひとだ。

星野源さんの本を読むのははじめてだったのだけど、とても良質のエッセイだった。

アーティストに俳優、文筆家と、それぞれの分野で突出した才能を発揮しながら、紡がれる言葉は、どれも良い意味で無駄な装飾が無く、するりと身体の中に入ってくる。
この感覚はわたしと同じだ、こういう考え方や表現があるんだと、さながら冒険をしているような雰囲気を楽しむことが出来る。
ありのまま、感じたままを文に起こすのもまた彼の醍醐味で、とても好きだなぁと思う。

読んでいると、その情景が目の前に浮かんでくる。明かりが灯ったマンションの窓、街灯に照らされた夜の道路。タイトル通り、車窓を流れていく街並みを源さんの目を通して、もしくは隣で眺めている気分を味わえる。

なんとぜいたくな体験なのだろう。

新垣結衣さんのことを綴った章は特に、秘されたプライベートを覗き見てしまったようないたたまれなさと気恥しさと微笑ましさに頬をゆるめながらページを繰った。“ごく普通”のふたりの間に流れる雰囲気もまたさり気なくて、自然なやわらかさとあたたかさに溢れていた。

どのエピソードも、決して量は多くはないのに、そのときの彼の心情や心の動きを丁寧に追うことができて、同じペースで歩いているような心地だった。

にがくて、苦しくて、でもときどきちいさな幸せが訪れる日々。

もう少し、頑張ってみようと思わせてくれる素敵な本だった。

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