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さの
2019年10月6日 13:40
鼻腔を、甘い水の匂いがすぅとかすめた。かすかにそよぐ空気が運んできたその匂いに、空を見上げる。ごく最近、この匂いに、ペトリコールという名前がつけられているのを知った。ペトリコール、ペトリコール。口の中のみでそっと呟いてみる。どこか楽しい、美しい響きだ。ぽつ、と額に雫が落ちる。こちらの行く手を阻むように爪先に雨粒が落ち、コンクリートに点々と黒い染みを穿っていく。眼鏡が汚れないよう顔を伏
2019年10月13日 16:59
なんだか仰々しいタイトルになってしまったが、中身はなんのことはない、ただの自分語りである。文字におこしたいという欲に素直に白旗をあげて、つらつらと書き連ねていきたい。イヤホンをそっと耳から外して、ほぅ、と溜息をひとつ。手元のベージュの冊子を閉じて、表紙を撫でた。掌に少しざらりとした感触が伝わってくる。夢から醒めたような心地で周囲を見渡す。普段と変わらぬ自分の部屋である。今の今まで