チョウチンアンコウになりたい夜
皆さんはチョウチンアンコウという生き物をご存知だろうか。
その名の通り、頭の先っちょに提灯のような発光器官を有する深海魚である。
私は深海生物が好きで、よく魚の図鑑や、深海生物の解説本なんかを眺めては、その奇想天外な見た目や、極端すぎる生き様を知っては、楽しんでいる。
このチョウチンアンコウ、見た目の突飛さだけではなく、恋愛の仕方もブッとんでいる。
上の画像に映っているのは、メス♀の個体だが、その下部にちいさなイボのような出っ張りがあるのがわかるだろうか。
それは、ただのデキモノではなく、「オス♂の個体」である。
意味不明に思われたかもしれない。
深海域に生息する生き物は、光がほとんど届かない極限環境のなかで、他の個体に出会うことが難しいという特殊な環境で生活している。
そのため、同種のメス個体を見つけると、「チャンス!」とばかりに、一心不乱にそのお腹にかぶりつく。
その後、時間をかけて、血管や皮膚などの組織を、メスの体と一体化しはじめるのだ。
そして、血管を通してメスから養分をもらい続け、タイミングが来たら精子をお渡しするという、子孫を残すためだけの存在になってしまう。
文字通り、「愛する者とひとつになる」のだ。
グロいと思われる方もいらっしゃるかもしれない。私自身も、そんなオスにすこし同情する。
しかし、同時に「うらやましいなぁ」と思ってしまう自分もいる。
現在、人間の生活をする上では、色々な場所に出会いの場がある。マッチングアプリやデーティングアプリなど、理想のパートナーを見つけるのには深海生物にくらべたら容易だ。
しかしながら、やはり関係がうまくいかないこともあり、お別れすることになることも山ほどある。
私はその度に、「もうひとりの自分が消えてしまう」ような喪失感に襲われる。
そんな思いにかられ眠れない夜、
私はチョウチンアンコウに嫉妬しているのだった。
...いや、
やっぱり人間がいい。
ちゃんとセックスしたいし…
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