柴チェラー シーズン1(Tinder編)
はじめに
始まりは"年始の抱負"からだった。「毎月ひとつ、やったことないものをやってみよう」というゆるい目標の下、さまざまなことに手を付けてはTwitterで報告していた。そして、それが"マッチングアプリ"だったのが4月のこと。
マイカーやマイホームの購入、結婚、出産、育児…旧友の同世代フォロワたちがツイートに綴る人生のステップの中、奇行の数々を書き連ねる狂人、ピエロ、あるいは昨今話題の異常独身男性。もはやそれは、ほとんどのフォロワにとって見飽きたテレビのCMのような日常であり、目に留まるほどのものでもなかった───Tinderに関する呟きを除いては。
結婚したくなったワケでも、人肌恋しかったワケでもなく、"スケボー"や"FPS"のように、それはぼくにとってただ「飛び込んだことのない世界」の一つだった。
しかしマッチングアプリとは無縁の人生を送ってきた同世代にとってそれは並々ならぬ興味の対象となった。「報告が楽しみすぎて夢にまで出てきた」というフォロワもいた。それらのツイートをこの度、3章の随筆に認めたというわけだ。
あれから一星霜。お待たせして本当に申し訳ない。
また、この記事を公開するにあたり改めて、家族よりも恋人よりも親しく感じている───中には10年を超えた付き合いもある───Twitterフォロワの皆様へのバカでかクソでか感情と特別な感謝を。
お品書き
How to enjoy Tinder
看護師さんエロい説について
出会った女の子たちのメモ
1.How to enjoy Tinder
何でもよかったマッチングアプリからTinderを選んだ理由は2つ。Tinderの男女平等な課金体系に好感を持ったこと。そしてパッと見で"どちらにスワイプするか"というほぼ一瞬で勝負が決まるTinderのシステム上で、自分がどれくらい通用するか測る意図があった。しかし…
痛々しい負け惜しみの投稿の通り、開始から1週間は
「マッチしない」
「マッチしても会話が続かない」
「会話が続いても突然相手が消える」
これらが全てだった。状況の変わらなかった3日目、自分がベトナムの米軍のように、アフガンのソ連軍のように緩やかに敗北していることを悟る。ただコストをかけていくだけでは何も変わらない。ダルビッシュ選手も言っていた。
そして高校にも通ったことのないこの頭脳をフル稼働させ、ブログが書ける程度のマッチに漕ぎ着けた。その内容をまとめた下記の文章は、これからマッチングアプリを始める人にも必ず役立つし、文字通り必勝法と言っても差し支えない。無償公開するのが惜しいくらいである。
なおこの時期、テレワークでの生産性がガタ落ちしたが、ふだん真面目に仕事をしていたので事無きを得た。
「知人の異性にプロフィールを見てもらう」
Tinderはシステム上どうしても写真選びが重要なので、自分の写っている写真から画質の良いものを多く集め、複数の異性に写真を選んでもらった方がいい。セルフプロデュース能力の優れたインフルエンサーやファッショニスタではない一般男性は特に、盛れたと自分が思う写真と、女性に刺さる写真が意外と一致していない。さらに、写真の順序や自己紹介の内容も、恥を捨てて査読してもらおう。あなた"が"アリ/ナシを選択するように、あなた"を"アリ/ナシで選択するのは異性だからだ。
異性の友人がいないあなたは、私のTwitterにスクショをDMしていただければ、当方の最精鋭の女性フォロワに添削してもらうのでどうぞご相談を。
「数を撃つこと」
章の冒頭で述べた3点は、容姿が優れていようがそうでなかろうが、実は構造は同じだ。その先も含めてこう言い換えることができる:
「全体の中からn% マッチする」
「マッチした中からn% 会話できる」
「会話できた中からn% 会うに至る」
………
上記の例えで、とりあえず全て1%だとすれば、0.0001%(100万分の1)会うことができるはずだ。100人と会いたければ1億回のLikeを飛ばせばいい。乱暴に全て1%としたが、実際にはそこまで低い率ではないし、それぞれのステップは努力───先程述べたような写真の厳選など───で率を上げることができる。Tinderは一番安い課金プランで無制限のいいねができるので、手っ取り早く母数を増やすべきだ。この程度、スイッチバー の1時間どころかHUBのジントニックよりも安い。
「選択と集中」
数を撃ってれば自然と「この人とは会話が続きそうだな」「こりゃいくらしっかり返事考えても相槌しか返ってこんな」が、経験則的にわかってくる。後者は相手するだけ無駄だ。見た目が好みなら頑張りたくなる気持ちもわかるが、写真なんていくらでも加工ができるので、現実的には会うまで他と条件は変わらない。むしろ自分のことをぞんざいに扱う相手への怒りを以てバッサバッサ切り捨てていこう。
斯くして記事のネタになる程度には、最低限のマッチを果たした。マッチングアプリ初心者あるいは未経験者諸君にとっても、これが参考にならんということはないだろう。
2.看護師さんエロい説について
マッチングアプリとは関係なく耳にしたことはあった。そしてTinderにも看護師が多かった。
この章では何の事実にも基かない憶測を述べる。
<仮説1>
専門学校の学費を、卒業後に就職を約束した医療機関が請け、数年の勤務でペイでき、転職や再就職が容易なため「一人でもやっていける」「手に職」の筆頭であり、そういう職業を選ぶ人に、幼い頃から現実を見てきた「母子家庭の娘」が多く、青少年期の育ち方からあまりコンサバティブな性観念を持っていない事が多い
<仮説2>
人間の身体を相手にする仕事をしているため、自身を含めた身体への神聖視が低く、あるいは無く、「性行為は女性の身体が"消費"されてしまう行為だ」という感覚を持たず、ワンナイトぐらいどうとも思わない人が多い
<仮説?>
自分たちがワクチン接種済みで無敵なので、マッチングアプリで遊んでいるのかも知れない
看護師さんエロい説について、識者によるもう少しまともな論説があれば情報求む。
3.出会った女の子たちのメモ
ここからはフォロワが一番楽しみにしていた、ぼくがどんな女と出会(でくわ)したか、という部分になる。この一ヶ月間で出会った9人の記録、当時の"ツイートによる実況中継"と共にお楽しみあれ───
1人目
医療事務(28)京都、大分出身
記念すべき第1号。小柄で可愛らしい、大分弁の女の子が来た。しかしなぜかすっかり疲れてしまった。喫煙の習慣はないのに、タバコを買って帰るほどに
翌日アプリを見たらマッチ解除されていた。何故
2人目
高校教諭(25)大阪
近所の高校の先生だった。先生というだけあって、すごく落ち着いていたが落ち着きすぎて、普段話すことのない会社の同僚と飲み会で隣同士になった程度の盛り上がりで解散した
3人目
看護師(26) 奈良、大阪出身
ミナミで車を降りた後、19時まで飲み食いして店を出たらもうどこも開いていない。「このまま帰る?」と言うのでそれは寂しいな、と言うと「私も」。歩いていると湊川のホテル街が見えてきたので、指差して酒買って行く?と聞いたら「私きょう生理だよ、タイミング悪いね」と。じゃあ帰る?と聞いたら「それは寂しいな」とさっきの言葉をそのまま返された。酒を買ってホテルに行って3時間ぐらいダラダラ話し、その子の終電の時間が来たので解散した。
病棟ナースだからか「採血しやすそ〜」と言われて腕を触られたあと年齢を当てられちょっと怖かった。
この子とは普通に仲良くなりその後も何度か飲みに行ったりしたが、ぼくの付き合う気がない態度があからさまだったためか、自然に会わなくなった。
なおその前の年に"ペアーズで仲良くなり友達以上になったけどなんか自然消滅した"という相手が、ぼくと同い年で弊社の営業部門にいることを何度か会ううちに聞いた。しっかり特定して社内Webサイトで顔を確認した
4人目
メガゼネコンの建築士(26) 大阪
この後さらに10時間一緒に飲んでいた。楽しかったし付き合ってもいいかなと思うぐらいの人だったが、その後ある日突然返信がなくなる。何故
5人目
OL(29)大阪、奈良出身
相手もぼくも悪くないけど全然盛り上がらなかった。互いに「あー…そういう感じね…笑」って感じだった。婚活っぽかった。Pairsとかで頑張ってほしい
6人目
フリーター(21)大阪、島根出身
「ごめんね営業みたいになっちゃって、1杯だけって言ってたのに…」「今度昼間遊ぼ、お詫びにご飯奢るね」との事だった。LINEは交換した
なお令和3年の4月だったため、こんな投稿も
どタイプの相手にはアプローチできないどころか上手く喋れなくなるため、逆に何も起きなかった
その後ドライブ行こうという話になったが、その日に突然出勤になってしまったらしく、職場まで送っていくだけのドライブをするなどした
その後自然と返事がなくなる
7人目
看護師(26)大阪、熊本出身
5人目と同じような感じ。昼飲みしてサッと解散。その後互いに連絡もなし
8人目
芸大生(26)京都、大阪出身
コンカフェと二郎系でバイトをするフォロワ3000人の芸大生、キャラが濃過ぎる、まさに全部乗せのマシマシである
容姿が若い頃ミナミのバーで恋したモデルのお姉さんに少し似ていた
とても賢く、話が無限に続く相手だった。如何にもTwitterの人って感じ。3回ほど会ったが、ある日突然返信がなくなる。何故
9人目
看護師(25)大阪
災害拠点病院指定で働くオペナース、ガチで彼氏作る気の人っぽくて激詰めされる
ガチで彼氏作る気の人っぽくて激詰めされた(再)
12月から4ヶ月で-12kgしたのよ〜って言って写真見せてくれて、いやこれだったら多分ぼくマッチしてないです!ひどーい!アハハうふふ〜みたいなやりとりをしてて楽しかった
そして次回のデートの計画を立てていた、その矢先───
おわりに
突然の打ち切り
誤ってアカウントを自らBANしてしまい、短くも充実したTinderライフはあっけなく終了した。まぁそんなこともある。むしろ既に4月は終わり、1ヶ月を超えていたため、このようなきっかけがなければ終わっていなかったかもしれない。
近頃さまざまなSNSで"マッチングアプリ依存症"を自認する人が多くいる。勝手を覚えて興が乗ってきていたところだったことも考えると、幸運だったかもしれない…。
初めてのnote、駄文拙文ながらここまでお読みいただきありがとうございました。