「学び方」の学び方
先日、某政令市で行われた教員研修に講師の一人として関わった。この研修に参加したのは、市内の公立学校で主幹教諭を務めている50名の先生方である。
研修は「学校組織マネジメント」をテーマにした3回連続のもので、7月の今回がその1回目。2回目は9月、3回目は来年2月に行われる予定だ。
自薦または校長の推薦による希望制の研修なのだが、募集開始から数日で定員である50名の枠は埋まってしまったそうだ。
・・・1回目の今回は理論編ということで講義が中心だったが、前半・後半にそれぞれ20分程度の話し合いの時間を設けた。
前半は席が隣同士の2人組、後半は席の近くで3人組をつくって話し合いを行ったのだが、特にアイスブレイクの時間を取るまでもなく、活発に意見交換が行われていたのが印象的だった。
研修当日は私が勤務している教職大学院の院生数名が、フィールドワークの一環として参観していた。いずれも他の自治体から教職大学院に派遣されている現職教員たちである。
彼らが参観した感想として異口同音に述べていたのは、
「先生方が生き生きと研修に参加している」
「やらされる『話し合い』ではなく、参加者が主体的に話し合っている」
「ウチの自治体では『上意下達』型の研修が一般的なので、この研修の自由な雰囲気に驚いた」
ということだった。
無論、今回の参加者は希望制の研修に申し込んでいる主幹教諭ばかりだから、総じて意欲が高い人たちの集まりなのだろう。
また、参加者の多くが勤務校で教務主任や研究主任などを務めているため、似たような境遇の者同士で話が弾んだということもあったに違いない。
だが、それ以外にも要因があるように思われる。
たとえば、この自治体では10年以上前から教員研修の改革に取り組んでおり、悉皆の初任者研修や中堅教諭等資質向上研修などでもアクティブな学び方を積極的に取り入れてきている。
そうした学び方は校内の研修などにも生かされているため、一人ひとりがディスカッションやファシリテーションに慣れているということはいえるだろう。
また、この自治体の教育委員会が学校に関わるときのスタンスは、「管理型」や「指導型」というよりも「支援型」や「伴走型」だといえる。
そのせいか、指導主事などの教育委員会関係者がいる前でも、参加者が自由に本音で話をしているように見受けられた。
そうした自由な雰囲気の背景には、
・昭和の時代に革新派の首長が市政を長く担っていたこともあり、教職員団体の活動が盛んであるなどのリベラルな気風があること
・市教委と校長会や教育研究会が友好的な関係にあり、ボトムアップで物事を進めていこうという雰囲気があること
・・・などがあると思われる。
おそらく、この自治体の教員研修は、一朝一夕に成り立ったものではないのだろう。
付け加えるとすれば、こうした学び方をしている教員たちのなかには、自らの授業でもアクティブな学びを推進している者が多いのだろうと推察する。自分自身の学び方を教室に持ち込んでいるわけだ。
逆にいうと、教員自らがアクティブな学び方を経験していない場合や、心理的安全性がないなかで話し合いをしている場合などには、おそらく子どもたちの学びもアクティブにはなりにくいだろうと想像する。
そう考えると、子どもたちのアクティブな学び方というものも、一朝一夕には成り立たないものなのだろう。