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「正しいことをしたければ・・・」
先日、ある大手企業で部長を務めている方が、ご自身の「座右の銘」のことを紹介していた。
その「座右の銘」とは、テレビドラマ『踊る大捜査線』のなかで、定年間近の老刑事が若い刑事に向かって発したこんな台詞である。
「正しいことをしたければ偉くなれ!」
このドラマで織田裕二が演じた主人公の青島刑事は、強い正義感の持ち主で、常に弱い者の側に立って行動をしようとする。その過程で警察の理不尽な仕組みに疑問を持ち、上層部とことごとく対立するのだ。
そんななかで、いかりや長介が演じたベテラン刑事・和久さんが発したのがこの言葉なのである。
長年、現場で戦ってきた者が後輩に向けて、
「自分の信念を貫き、正しいことをやり抜きたいのであれば、仕組み自体をつくったり変えたりする側になってくれ」
という願いを込めて贈った言葉だといえるだろう。
・・・私の知り合いの校長や指導主事などのなかにも、この台詞に感化されたという人は少なくない。
校長や指導主事が「偉い」のかどうかはわからない。だが、少なくとも一人の教員として学校で働くのに比べれば、その影響力は大きい。自分の手で仕組みをつくったり変えたりすることも、一教員よりはやりやすいだろう。
・・・1977年に第1作が効果された映画『スター・ウォーズ』のエピソード4〜6では、ダース・ベイダーという悪の権化が登場する。
一方、その後に制作された「前日譚」であるエピソード1〜3では、アナキンという純真な少年がダース・ベイダーへと変貌していく様子が描かれるのである。
エピソードを1から順に並べ直すと、一人の少年が愛する者を守るために「ダークサイド」へ堕ちていき、悪の権化として生きる過程が描かるという構成なのだ。
・・・もしかするとアナキンの心の中にも、
「正しいことをしたければ・・・」
という思いがあったのかもしれない。
「正しいことをするために偉くなる」
ということは、個人が社会を変えていくために必要なのかもしれない。
実際に、冒頭で紹介をした部長さんは、当初の志を今も持ち続けて仕事をしているように見える。だが、それはけっして簡単なことではないだろう。
青島刑事が「ダークサイド」に堕ちる可能性だって、ゼロだとは言い切れないのである。