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地方創世のジレンマ
今から10年以上前の2011年に、日本テレビ系で『高校生レストラン』というドラマが放送された。
料理人としては一流だが教員としては未熟な臨時採用の教師と、地方の町で閉塞感を抱えながら生きる高校生たちが、自らの手で料理をつくって提供する「高校生レストラン」に関わることをとおして成長していくというストーリーである。
このドラマは実話がもとになっている。モデルになったのは、三重県多気町にある県立相可(おうか)高等学校食物調理科の生徒たちが運営する高校生レストラン「まごの店」だ。
この「まごの店」を支えてきたのは、生徒たちや担当教師の熱意だけではない。高齢化や過疎化が進んでいく町を何とかしたいという関係者たちの思いが、取組を後押ししてきたのである。
そうした思いが結実し、高校生たちによるレストランを中心に町は活性化していった。そして、遂には卒業生たちによる「せんぱいの店」が誕生するまでに至ったのである。
多気町と同じような課題を抱える地方自治体は日本全国に存在する。「まごの店」のようなスケールの取組は難しいとしても、学校教育をとおして地方創生を目指している自治体は数多いだろう。
私自身も今、某自治体で中学校の「総合的な学習の時間」の授業をとおして「町おこし」をしようとするプロジェクトに参画している。
生徒たちが探究的な活動をしながら、地元である町の魅力や可能性に気づいていく取組には、大きな価値があるといえるだろう。
しかし、それは諸刃の剣でもある。探究的な学びを続けた生徒たちの関心が、やがて地域から社会全体へと移っていき、せっかく育てた人材が大人になると都市部へ流出してしまうという問題を抱えているのだ。
だからといって、子どもたちを地域に繋ぎ止めようとすれば、その子の未来を奪ってしまうかもしれないというジレンマもある。
そうしたなかで「納得解」を探していくことは、けっして簡単ではない。誠実な大人であればあるほど、その悩みは深くなるに違いないのだ。