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【読書ノート】鈴木達人監修『地図でスッと頭に入る地政学』(昭文社)
地政学とは、
「地理に着目して世界で起こっているさまざまな動きを読み解く学問」(本書の「はじめに」より)
である。
・・・その国の政治や経済は、指導者や政治体制の変化によって大きく変わる可能性がある。けれども、
「日本は周囲を海に囲まれた島国だ」
「ロシアとウクライナは陸続きの隣国である」
といった地理的条件は簡単に変化しない。
地政学はそうした地理的条件をもとにして、世界の政治、経済、軍事、外交などについて考えていくものなのだ。
本書には約60のトピックが、それぞれ「見開き2ページ」、そして「地図・グラフ・図表と解説付」で収められている。
喫緊の国際問題である、
・ロシアによるウクライナ侵攻
・イスラエル軍とハマスの軍事衝突
・中国の海洋進出
・北朝鮮の核開発
・移民や難民
・アフリカの食糧危機
・地球温暖化
などについても、地政学の視点から分析や解釈が示されているのだ。
それは、
・ロシアが日本に北方領土を返還しない理由
・沖縄に米軍基地が存在する意味
・台湾の半導体メーカーが熊本に進出した訳
等々、日本に関係が深い問題に関しても同様だ。
ただし、本書は一般の読者向けに書かれた入門書である。地政学について深く学ぼうとするのであれば、本書の内容を鵜呑みにするのではなく、批判的に読み進めることも必要だろう。
・・・数年前に「親ガチャ」という言葉が流行した。この「親ガチャ」とは、家庭環境や親の経済力・価値観などが子どもの人生に大きな影響を与えることを、無作為に景品が出てくる「ガチャガチャ(カプセルトイ)」になぞらえたものである。主に若者の不公平感や生きづらさを表現する際によく用いられていた。
それに倣えば、「国ガチャ」と呼べるものもあるのだろう。地形、気候、国土の面積、資源、隣接する国をはじめとして、自分が生まれた国について「たら・れば」を言い出したらキリがない。
しかし、
「国土にもっと資源があれば」
「隣国との関係が友好的だったら」
などと嘆いていても仕方がない。
まずは「ガチャ」を受け止め、その上でどう考え、どう行動するかが大切なのだろう。そんなことを考えさせてくれる一冊でもある。