宝の持ち腐れ⁉
令和4年度の「学校における教育の情報化の実態等に関する調査」の結果が公表された。この調査は、公立学校における「教育の情報化」の実態を把握するために、文部科学省が毎年の年度末に実施しているものである。
調査の内容は、大きく分けて次の2つである。
前者の環境整備については、2019年(令和元年)に始まった「GIGAスクール構想」の取組が調査結果にも大きく反映されている。たとえば、児童生徒の用端末の整備状況は次のグラフのとおりだ。
令和2年3月の時点では「児童生徒4.9人に1台」の割合でしか整備されていなかった教育(学習)用の端末が、令和5年3月には「児童生徒0.9人に1台」にまで増えており、文字通り「1人1台端末」が実現されている。
また、普通教室の無線LAN整備率は、令和2年3月の48.9%から3年間で95.1%へと劇的な変化を見せている。
一方、教員の「ICT活用指導力」については、4つの大項目(A~D)と16の小項目(A1~D4)からなるチェックリストに基づいて、教員が自己評価をするかたちで調査が行われている。下のグラフは、小項目ごとに「できる」もしくは「ややできる」と回答した教員の割合である。
大部分の項目については、8~9割の教員が「できる」もしくは「ややできる」と回答している。しかし、次の2項目に関しては昨年度に続いてその割合が低い。
これらは、ICTを「協働的な学び」に活用していく上で極めて重要な能力だと言える。しかし、4人に1人以上の教員が「あまりできない」もしくは「まったくできない」と回答していることになるのだ。
教員個人が「できない」と回答した理由としては、
「ICT機器やソフトウェアの操作に不慣れ」
「ICTの活用に必要性を感じない」
などがあると思われる。
また、データは市町村(設置者)単位でも集計されており、自治体間での差が大きい。そして、同じ自治体内であっても学校間に差が生じているところもあるだろう。こうした差は、
「ICTの活用に対する教育委員会関係者や校長の意識」
「自治体内や校内での推進リーダーの存在」
「教員向け研修の内容、方法や頻度」
「ICT支援員の配置や相談窓口の設置状況」
などによって左右されることだろう。
せっかく整備された端末や回線を「宝の持ち腐れ」にしないために、今回の調査結果が芳しくなかった自治体・学校の関係者は、これを真摯に受け止めるべきである。その影響を受けることになるのは子どもたちなのだから。