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原因究明と再発防止

 神奈川県横須賀市内の公立小学校に通う5年生の男子児童が、宿泊行事で訪れていた施設で就寝中に二段ベッドの上段から床に転落し、頭を骨折する大けがをして意識不明の重体になっているという。

 この男子児童の一日も早い回復を祈りたい。

 報道によると、この男子児童は今月20日の未明、宿泊行事で訪れていた神奈川県三浦市にある宿泊施設で、寝ていた2段ベッドの上段から床に転落したということだ。転落するに至った経緯は明らかになっていない。

 寝ていたベッドに取り付けられていた転落防止用の柵に異常は無かったということで、横須賀市教育委員会は転落した詳しい原因を調べているという。

 この事故を受けて、市教委は市内の公立学校の校長に対して、
・宿泊行事の際、就寝中の児童の見回りを行う体制を整えること
・施設の危険な箇所について事前に確認することなどをあらためて徹底すること
 を指示したそうだ。

 また、
「このような事故が起きて申し訳ありません。被害児童の一刻も早い回復を祈るとともに、事故を十分に検証し再発防止策を講じていきます」
 というコメントを発している。


 ・・・「事故を十分に検証し再発防止策を講じていきます」
 と語っているわけだから、「就寝中の児童の見回りを行う体制を整えること」や「施設の危険な箇所について事前に確認すること」という指示については、あくまでも暫定的なものということになるだろう。それを踏まえたうえで、疑問点などについて整理をしておきたい。

 まず、「就寝中の児童の見回りを行う体制を整える」についてだが、これは今後も二段ベッドの上段の使用を続けるのか、それとも代替の就寝場所を確保するのかによって、対応は大きく異なるはずだ。

 転落の原因を「十分に検証」していない間も上段の使用を継続するのであれば、当然ながら「見回りを行う体制を整える」必要がある。一方、上段を使わないのであれば話は別だ。これまで以上に見回りをする必要性は見当たらない。

 もし、検証の期間中も二段ベッドの上段を使用するのであれば、誰が「見回り」をするのかという問題が生じる。教員の長時間労働の是正が大きな社会問題になっている今、これを引率の教員に課すのはいかがなものかと思う。

 そもそも、宿泊行事中の教員による深夜の巡回は、教員の業務としてグレーゾーンである。引率している児童生徒の就寝時刻は、概ね午後10時頃だ。そのことだけでも大幅な時間外勤務につながってしまうが、その上に深夜の巡回を求めるのであれば、労務管理上の大きな問題である。翌日の引率業務に支障をきたすことも必至だ。

 たとえば、老人福祉施設でも深夜の巡回は行われているが、それを担当するのは夜勤の職員である。学校の宿泊行事の場合も、本当に深夜の巡回をするというのであれば、専門のアルバイトを雇用することなどが必要だろう。

(無論、それでも転落の危険をゼロにすることは不可能だ。)

転落事故があったものと同タイプのベッド

 続いて、「施設の危険な箇所について事前に確認することなどをあらためて徹底すること」についてである。

 上の写真でもわかるように、このタイプの二段ベッドの場合、転落防止用のフェンスが設けられていることが一般的だ。しかし、梯子を使って上段へ移動をすることになるため、その部分にはフェンスがない。したがって、そこから就寝中に落下をする可能性は否定できない。

 そうであるならば、やるべきことは「危険な個所の確認」ではなく、当該の部分に開閉式のフェンスを付けるなどの安全策を施設側に要望することだろう。

 鉄道のホームからの転落事故を防ぐためには、駅員が巡回するよりも「ホームドア」を設置することのほうが有効性が高い。それと同じである。


 さらに付け加えるとすれば、この機会に宿泊学習の意義や教員による引率の問題についても議論をするべきだろう。それらを含めた「検証」を期待したいものだ。

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