未納の「給食費」を徴収するのは教員の仕事なのか?
これまで、未納になっている「給食費」を徴収するのは、多くの自治体において教員の仕事だった。
私も教員や副校長のとき、未納の家庭に電話連絡や家庭訪問をして督促をしたことが何度もあるが、相当にストレスが溜まる「仕事」だった。そもそも、借金の取り立てをするために教員になったわけではないのだから。
未納の大部分は、銀行口座の残高不足などによる「うっかりミス」であるが、なかには悪質な「確信犯」もいる。
たまに、
「未納の家庭の子どもには、給食を食べさせなければよいではないか」
という人がいるが、そんなことをすれば人権問題になってしまう。子どもに罪はないのだから。
「確信犯」たちは、
「結局、給食費を払わなくても我が子は給食を食べられる」
ということを見越して支払いを拒んでいるのである。
・・・かつて、知り合いの副校長のなかに、「運動会」の当日を「未納金回収重点日」と位置づけていた方がいた。
普段の電話や家庭訪問の際には居留守を使う保護者たちも、運動会の日には子どもの応援のために来校する。周囲の目があることもあって、悪質な保護者も渋々ながら支払うことが多かったらしい(無論、周囲には「取り立て」だとバレないように配慮をした上でのことだ)。
しかし、文部科学省が学校給食費を地方公共団体の会計に組み入れる「公会計制度」の導入と、保護者からの学校給食費の徴収・管理を地方公共団体の業務とするように促進したことで、風向きは大きく変わったのだ。
その背景にあるのは、言うまでもなく「教職員の働き方改革」である。
・・・風向きは大きく変わった、と思っていた。ところが、これに逆行する動きが広島市で起きているのだ。
広島市でも、2022年度から「教職員の働き方改革」の一環で徴収事務を市教委に移している。しかし、その後は未納額が増加しているのだという。
市教委の見立てによると、未納額が増加している理由は、
・保護者側に口座引き落とし手続きなどの手間が発生したこと
・納付書や督促状を見ていない保護者がいること
に加え、
・日頃接する教職員が督促しなくなった影響も出たから
だということらしい。
今年度からは、保護者面談の際に教職員が納付書を手渡すという方法を取るそうだが、明らかに「教職員の働き方改革」の動きに逆行をしていると言わざるを得ない。
ついでに言うと、広島市の教育関係者は、
・今年度の教員採用試験合格者の中から辞退者が続出する
・来年度以降の教員採用試験の倍率が下がる
・早期退職者が増える
という可能性については、覚悟をしておいたほうがよいと思う。
こうした取組が全国に広まらないことを願いたい。