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シャッターを開けたのは誰?

 ある小学校で、「朝のあいさつ運動」を巡って校長と教職員が対立をしているそうだ。

「朝のあいさつ運動」とは、
「児童が登校する時間帯に、教職員が日替わりで校門のところに立って子どもたちとあいさつを交わす」
 というものだ。

 この小学校では、これまでそうした取組をしていなかった。しかし、今年の4月に着任した新しい校長が、
「ぜひ、やりたい」
 と、提案をしているそうだ。

 理由は、
「前任校で『朝のあいさつ運動』を実施したところ、子どもたちに落ち着きが見られるようになり、いじめも減少したから」
 だという。

 これに対して、子育て世代が多い教職員からは、
「『朝のあいさつ運動』を担当する日には早めに出勤しなければならず、我が子を保育園に送ってからでは間に合わない」
「そもそも、この運動にどれだけの効果があるのか疑問だ」
 という声が出ている。

 ・・・たしかに、この校長の前任校では「朝のあいさつ運動」と「子どもたちの落ち着き」や「いじめの減少」との間に相関関係があったのだろう。しかし、それを因果関係と呼べるかどうかは定かでない。

 また、「朝のあいさつ運動」に参加するために教職員のワークライフバランスが崩れれば、それが学校にとってマイナスに作用する可能性もあるだろう。

 そして、「子どもたちの落ち着き」や「いじめの減少」のためには、その原因を踏まえたうえでの、もっと効果的な取組があるのだろうとも思う。

 ・・・結局、この学校では現在のところ、校長が毎朝「一人あいさつ運動」を実施中だということだ。


 ・・・最近、犬のジョンとその飼い主である男の子が出演するシャッターのCMが放送されている。

 このCMの前半は、犬のジョンの視点で描かれている。

 自宅の車庫で一家とジョンが車に乗り込み、男の子がジョンに、
「シャッターを開けて」
 とお願いすると、ジョンはシャッターに向かって超能力の「念」を送る。

 するとシャッターが開き、ジョンは男の子とその家族から「すごい」と賞賛される。毎回、こうやって一家のためにシャッターを開けているジョンは、そのことを誇りに思っているのだ。

 しかしCMの後半で、シャッターが開いたのはジョンの超能力によるものではなく、エンジンをかける音にセンサーが反応したからだという「ネタバラシ」がある。

 そして男の子の
「このことは、ジョンには内緒だ」
 というモノローグでCMは終わる。


 相関関係と因果関係とを区別することは、思っている以上に難しいものだ。

 犬のジョンは、その違いに気づかなくてもいいのかもしれない。しかし、大人はその混同や勘違いに対して、もっと敏感になるべきだろう。

 ジョンの思い込みは誰も傷つけていないが、大人の場合、ときにそれは大きな迷惑となったり、問題を起こしたりするのだから。

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