便利さの陰で
長い間、神奈川県内を結ぶローカル私鉄だった相鉄線(相模鉄道)が、このところ脚光を浴びている。
2019年(令和元年)の11月には、西谷駅 と羽沢横浜国大駅の間が開業し、相鉄線とJR埼京線が直通となった。これによって、海老名駅や二俣川駅などから乗り換えなしで新宿駅まで行くことが可能となっている。
また、今年(令和5年)3月には羽沢横浜国大駅と新横浜駅の間に新横浜線が開業したことにより、東急目黒線・都営三田線・東京メトロ南北線・埼玉高速鉄道線・東横線・東京メトロ副都心線・東武東上本線との相互乗り入れが始まった。
沿線住民にとっては、新横浜から新幹線を利用する際の利便性が向上したのに加え、都心や埼玉などへ行く際のアクセスが格段によくなったのは喜ばしいことだ。
しかし、両手をあげて喜んでばかりもいられない。数年前まで、通常の上りの終着駅は横浜駅と決まっていたが、現在では様々なルートとその終着駅が存在している。
そのため、乗り間違えも多くなるし、もしも乗り過ごした場合には大変なことになってしまうのである。
また、複数の路線が一つにつながったことによって、どこかで事故や遅延が発生すると、その影響が広範囲に及ぶことになるのだ。
かならずしも「いいことづくめ」ではないのである。
そういえば、聴覚に障害のある方から「ハイブリッド車が普及したことによって、街を歩く際の危険が増えた」という話を聞いたことがある。
ハイブリッド車といえば、低速時には電動のモーター、高速走行時にはエンジンと、その駆動力を使い分けることにより、燃費がよいことで知られている。また、モーター使用時には音が静かなため、騒音の防止にも一役買っているのだ。
だが、この静かさが曲者で、聴覚に障害がある方にとっては、補聴器を使用しても車の接近に気づきにくいという問題があり、「あやうく轢かれそうになった」ということだった。
どんな取り組みであっても、すべての人が便利になったり満足したりということは難しい。
少なくとも、そこには何らかのマイナス面があるのかもしれない、という視点をもつことが大切なのだろう。