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教員採用試験の倍率低下 ~「選ぶ」のではなく「選んでもらう」時代~

 全国的に教員採用試験の倍率低下の傾向に歯止めがかからない。特に、小学校教員の応募者の減少が顕著になっている。たとえば、今年度の東京都の場合だと「小学校全科(英語コース含む)」の応募者数は2,603名で、昨年度より350名減少し、応募倍率は1.8倍(昨年度は2.5倍)に低下している。

 倍率低下の要因の一つが、教員の長時間労働の問題にあることは間違いないだろう。大学に入学した当初は教員を目指していたものの、教員の過酷な勤務実態を知り、進路変更をしたというケースが少なくないようだ。

 人材開発・組織開発が専門である中原淳教授(立教大学)は、対談の中で次のように語っている。

中原 教職も、たくさんある選択肢の一つだと僕は思いますよ。この間、英語がすごくうまい4年生に「先生になるか商社に行くか、どっちがいいと思う」と聞かれて、全然違う仕事だけど、その問いが面白いなと思いました。
(中略) 
 給与で考えたら絶対商社の方が高いじゃないですか。しかも顧客が選べるんですよ。教師は顧客を選べないでしょう。でもその学生は、子どもに興味があって先生になりたいと思っていたんだけど、企業にもいっぱいエントリーしているので。だから選択肢の一つに行ってたまたま内定をもらっちゃいました。そしたらなんかぐらぐら揺らぐわけですよ。中学校の先生になろうと思っていたんだけど、さて、どうする?

脇本健弘・町支大祐編著『教師が学びあう学校づくり』
(第一法規) 219-220ページ

 私が教員採用試験を受けた昭和の時代には、教員と企業を掛け持ちで目指す者は極めて少数派だったように思う。しかし、中原教授が指摘するように「教職も、たくさんある選択肢の一つ」だというのが、今の学生の一般的な感覚なのかもしれない。

 そうなると、たとえば中学校・高校の英語教員の場合には、上の表に載っているような仕事群の中から学生たちに「学校の先生」を選んでもらうことが必要になる。う~ん、どう考えてもこれは分が悪い。

 各自治体の教育委員会で教員採用に関わっている方々は、今や教育委員会が学生を「選ぶ」のではなく、学生に「選んでもらう」時代になっているのだということを自覚するべきだろう。
 そして、「選んでもらう」ためには、単に「教職の魅力」を伝えるだけでは不十分であり、労働条件などの面でも学生にアピールをしていくことが重要になっているのだ。

 道は険しい・・・。

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