「モノマネされてナンボ」の仕事
大阪府和泉市立義務教育学校(小中一貫校)に勤める46歳の男性教頭が、生徒会役員選挙の演説で自身のものまねをされたことに激高し、当該の生徒に対して不適切な言動を繰り返したとして、大阪府教育委員会は28日、この教頭を停職3カ月の懲戒処分とすると発表した。
記事によると「事件」の概要は次のとおりだ。
2017年6月の『水曜日のダウンタウン』(TBS系)で、「先生のモノマネ、プロがやったら死ぬほど子供にウケる説」が放送され、同月の「ギャラクシー賞」を受賞するなど大きな話題になったことがある(私も死ぬほど笑った)。
同番組では、この「先生のモノマネ、プロがやったら死ぬほど子供にウケる説」を検証するため、第一線で活躍するモノマネ芸人の神奈月、ホリ、ミラクルひかる、エハラマサヒロ、みかんが某中学校に出向き、そこで働く教師たちの口調や動きを徹底的に研究する。そして迎えた本番では、彼らがサプライズで披露した“先生モノマネ”によって教室が爆笑の渦に巻き込まれ、説の正しさが検証されるのだ。
モノマネ芸人による自校の先生方のモノマネに涙を流して笑う生徒たちの姿。そして、ネタづくりに取り組むモノマネ芸人たちのプロフェッショナルな仕事ぶりは、お笑い番組という域を超えて感動的でさえあった。
昔も今も「先生のモノマネ」は学校生活の定番である。とりわけ、校長や教頭などの「子供にとって権威がある存在」のモノマネは、抽象化能力やユーモアのセンスとともに批判的精神を醸成することにもつながる。また、「普通なら、いじってはいけない存在」をいじることによって、仲間との間には連帯感も生まれるだろう。
「教師こそ最も大切な教育環境である」
という言葉があるように、教師、とりわけ校長や教頭は、子供たちの成長のために「モノマネされてナンボ」の存在なのである。
・・・そもそも、記事を読むかぎりではそのモノマネに悪意があったとは思えない。しかも、選挙演説のなかにモノマネを入れるというアイデアは、母親と一緒に考えていたというのだ。いまどき、微笑ましい光景ではないだろうか。この教頭は母親に対して「大人がすることではない」と言ったようだが、その言葉はブーメランのように本人へ返ってくる。
本来なら、この生徒会役員選挙の演説会のことは、生徒たちが大人になったときに同窓会などで盛り上がる「笑える話」の一つになっていたはずだ。それを「笑えない話」にしてしまった責任は重い。
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