「ハヤブサ消防団」〜地域社会と余所者(よそもの)〜
7月期に放送されたテレビドラマの中で話題になった作品の一つに、池井戸潤の原作による「ハヤブサ消防団」がある。
その「あらすじ」はこうだ。
ストーリーは、山梨県上九一色村に信者が居住する施設を建設し、修行やサリン製造などの拠点としたオウム真理教事件を思い起こさせるものだ。
ドラマの中盤以降では、この宗教団体の幹部たちによる嘘や悪行が次々と明らかになる。視聴者は、のどかなハヤブサ地区の平和を守るために奮闘する主人公たちに共感し、この勧善懲悪の物語の行方を見守ることになるのだ。
今から10年以上も前のことだが、私の勤務先の近くで精神障害者用のグループホームを建設する計画が持ち上がった。それに対して一部の住民が強硬に反対し、街の至る所に看板や横断幕が設置されたことがある。
結局、施設建設の計画は断念された。地域の中には、未だにそのしこりが残っているようだ。
地域社会を守ろうとする者やそれに同化しようとする者を善、一方の余所者(よそもの)を悪と決めつける図式は、明快である反面、危険でもある。
もしも余所者を悪だとするならば、世の中にいる少数派はすべてが悪ということになってしまう。そこから生まれるのは差別や分断、憎しみでしかないだろう。