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テレビの「チャンネル権」

 前回の記事で紹介をしたように、東京都港区愛宕にあるNHK放送博物館では、今年の大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』展を開催中(2月24日まで)である。

 一方、同博物館の常設展示のなかには、放送の歴史に関する興味深いものが多い。3階の一角には、1960年代の「茶の間」を再現したコーナーもある。

 部屋の「一等地」に置かれた白黒テレビと、その上に鎮座する熊の置物。そして黒電話、柱時計、火鉢、アニメ『巨人の星』でおなじみの「ちゃぶ台」など、「いかにも1960年代」という再現度である。


 ・・・当時は、よほど裕福な家庭でないかぎり「テレビは一家に一台」だった。

 そのため、家族の間で「見たい番組」が異なった場合、「チャンネル権争い」というものが生じていたのである。

 我が家の場合は、6歳上の姉が「国連の常任理事国」並の権力を握っており、たびたび「拒否権」を発動していたと記憶している。

 家庭に録画用のビデオデッキが普及するのは1980年代に入ってからのことだ。そのため、一度見逃してしまった番組は、再放送の機会がないかぎり見ることができなかった。「チャンネル権」は切実なものだったのである。


 今、テレビ番組の視聴方法はテレビ受像機によるものだけではない。スマホやタブレットなどのモバイル端末を利用して、見逃し視聴サービスや動画配信サービスなどを利用する人が増えている。

 テレビ番組は「家族揃って見るもの」から「一人で見るもの」へと変化しているのだ。

Canvaで作成

 ・・・「チャンネル権争い」などない、便利で平和な時代になったものである。

 もっとも、それによって失われたものもあるのかもしれないが。

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