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クラスの「川渡し問題」

 各地の学校では、4月から始まる新年度に向けて学級編成が行われる時期である。
 公立の小中学校の場合だと、法的に定められた学級数に従って、性別、各教科の学力、生活や行動の様子、居住地域等の面で偏りが出ないように編成するとともに、教育的な観点から「A児とB児は同じ(別々の)クラスに」などの配慮が加えられて一次案が作成される、というのが一般的である。
 このうちの「教育的な配慮」の中には、保護者からの要望によるものや、子どもだけでなく保護者同士の人間関係などに関するものも含まれる。
 実際、この時期になると「〇〇君(さん)とは絶対に別のクラスにしてください」といった保護者からの陳情が増えるものだ。また、そうした調整をすることが毎年の申し送り事項になっている学校も多いだろう。
 最近は小学校1年生の学級編成をする際に、幼稚園や保育園の関係者から「この子とこの子は、保護者同士も犬猿の仲だから、別々にしたほうがいいですよ」といった情報が水面下で寄せられることもある。 

 ・・・数学に「川渡り問題」というものがある。様々なバリエーションがあるが、以下はその一例である。

 川岸には、船頭と、ライオン1頭、猫2匹、ヒヨコ3羽がいて、ボートで向こう岸へ渡りたいと考えている。
 ボートに乗せられるのは、船頭以外に2匹(頭・羽)までだ。
 ただし、船頭がいない場所でライオンと猫が同じ数になると、ライオンが猫を食べてしまうし、ヒヨコが猫と同じかそれ以下の数になると、猫がヒヨコを食べてしまう。。
 ボートは川岸を何往復してもよい。動物達は全て無事に向こう岸へ渡れるだろうか?

 ・・・メンバーの組み合わせに関する問題だという点で、「川渡り問題」には学級編成と似ているところがある。異なっているのは、

・1艘だけのボートとは違い、クラスは複数に分けることができる。
 ※ただし、学年が1クラスだけという場合を除く。
・ボートは何往復もできるが、クラスは片道の「行ったきり」である。

 という点だろう。
 かつては小学校でも「1学年が5クラス以上」ということが稀ではなかった。しかし、少子化の影響もあって、最近は中学校でも「1学年が2~3クラス」というケースが増えている。
 クラス数が多い場合には分けようもあるが、そうでない場合には「あちら立てればこちらが立たず」という状況がいくつも生じてしまう。優先順位をつけて対応をしていくしかない。「犬猿の仲」ならぬ「ライオン・猫・ヒヨコの仲」などのケースに、等しく配慮をすることは極めて困難なのだ。

 とは言え、トラブルの未然防止を図るために、教師たちはギリギリまで頭を悩ませることだろう。本来は同じクラスに誰がいようとも、その中で人間関係を築いていくべきなのだが・・・。

 全国各地の学校で、新年度の新しいクラスが平和であることと、船頭(担任)が喰われないことを願うばかりである。

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