BGMで使われる洋楽
テレビ番組などのBGMとしてよく使われる洋楽には、2つのタイプがあるように思う。
一つは、
ジャーニーの『セパレイト・ウェイズ』や
サバイバーの『アイ・オブ・ザ・タイガー』
のように、イントロが印象的な曲である。
曲名ではピンと来ない方も、イントロを聴けば「ああ、この曲か」と思い当たることだろう。
もう一つは、
ワム!の『ラスト・クリスマス』や
ABBA(アバ)の『マネー、マネー、マネー』
のように、特定の時期やテーマのBGMとして重宝される曲だ。
前者は文字通り「クリスマス」の時期に、後者は「商売」や「財テク」がテーマの番組などでよく使われている。サビの部分に出てくる「クリスマス」や「マネー」という単語は、子どもでも聞き取れるはずだ。
ただし、2つのタイプのどちらの場合も、イントロやサビの部分だけが切り取られて使われたり、流れはじめてから数秒後には音量が絞られたりするので、歌詞全体を耳にすることは少ない。もっとも、たとえ適度な音量で曲全体が流れたとしても、英語の歌詞を聴いてその意味を瞬時に理解することは、多くの日本人にとって難しいだろうと思われる。
20年ほど前のことだ。ある小学生向けのイベントで、
J・ガイルズ・バンドの「堕ちた天使」
(Centerfold)
という曲が使われたことがあった。
これは1980年代の初頭に大ヒットした曲である。やはりイントロが印象的で、テレビ番組のBGMとして今でもよく流れている曲だ。また、自動車会社のCMに使われたこともあったと記憶している。
・・・しかし、テレビとは違ってこのイベントでは、イントロだけでなく約3分40秒間の曲全体が流されたのだった。するとイベントの終了後、ある外国人の保護者の方から、こんな苦情が寄せられたのである。
「あの曲の歌詞は、小学生のイベントに相応しくないのではいか」
ちなみに、この曲の1番の歌詞はこうである。
大意は、
「俺が学生のとき、同じクラスに憧れの女の子がいた。彼女は雪の結晶のようにピュアだった。・・・月日は流れ、俺はある男性向け雑誌の見開きピンナップページを見た。すると、そこには彼女の裸の写真が載っていたんだ。血が凍りついたぜ。俺の思い出が売られてるんだ」
ということになるだろう。
ちなみに、原題の "Centerfold" は、「雑誌の中央見開き、もしくは折り込みページのヌード写真」という意味である。
ショッキングな内容だが、曲調は極めて明るい。
また、3番の歌詞ではこの「主人公」の男も、
It's okay I understand
This ain't no never-never land
(わかってるよ、ここがネバーランドじゃないってことは)
と、現実を受け入れているし、最後には、
Oh yeah, I guess I gotta buy it
(とりあえず、この雑誌を買わなくちゃ)
というオチまでついている。
・・・とは言え、「小学生のイベントに相応しいか?」と問われれば、答えは「ノー」だろう。
20年前に比べて、日本で暮らす外国人は格段に増えている。こういうところにも、さらに注意を払っていく必要があるのだろう。