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変わりゆく『人生ゲーム』
『人生ゲーム』は、1960年に米国で発売されたボードゲームである。すごろくの形式で、学校生活、就職、結婚をはじめとするライフイベントを進めながら、資産を増やして最終的には億万長者を目指すというものだ。
日本では1968年に発売され、バージョンアップをくり返しながら今も人気を保っている。
私自身、小学生のころからこのゲームに親しんできた。成人してからも、仲間と旅行をした際に旅館の一室でビールを飲みながらプレイをした記憶がある。
現在、その『人生ゲーム』にNintendo Switch版が登場しているという。
Nintendo Switch版の『人生ゲーム』は、2023年10月に発売された。ボードゲーム版の特徴を残しつつ、デジタルならではの機能や現代風のアレンジが加えられた仕様になっているそうだ。
たとえばグラフィックの面では、3Dのキャラクターがボード上を動き回ったり、各マスに止まった際のイベントシーンがアニメーションで表現されたりするなど、視覚的な効果が加わっている。
ゲームのシステムにも、「インフルエンサー」「eスポーツ選手」「YouTuber」といった職業が登場したり、「動画配信でバズる」「炎上する」などのリアルなイベントがあったりする。
また、「スキル」や「アイテム」といった要素も導入されている。「交渉術」や「投資」などのスキルを習得することで、他のプレイヤーとの交渉を有利に進めたり、株で大儲けするチャンスが広がったりするのだ。
アイテムのほうは、移動距離を増やしたり、他のプレイヤーを妨害したりするなど、戦略の幅を広げる役割を果たすそうである。
さらに、オンラインによる対戦機能も搭載されており、離れた場所にいる友人や世界中のプレイヤーとも対戦することが可能になっているのだ。
このほかにも、CPUを相手に1人でプレイできる「ひとりで遊ぶ」モードや、短時間でプレイできる「さっくりモード」などが用意されている。
この「さっくりモード」は小学生時代から始まり、大人時代のターン数が短縮されているため、通常の「一生モード」の約半分の時間でゲームを楽しむことができるそうだ。
このように、Nintendo Switch版の『人生ゲーム』は「コスパ」も「タイパ」も優れていると言っていいだろう。その一方で、せかせかと追い立てられているような気がして、「ゆとり」には乏しいようにも思える。
・・・もっとも、『人生ゲーム』のこうした変化は、現代の「人生」そのものを象徴しているのかもしれないのだが。